一時期、テレビでもラジオでも雑誌でも、とにかく「悩み相談」系の依頼が、アホみたいに多かったことがあります。薄々気づいてはいましたが、私は「相談される側」の人間だと世間から認識されてしまっているのでしょう。だからと言って、それを安請け合いするのもまた無責任な話です。なので、できる限りその手の話は断り続けて現在に至ります。しかし、それで「そうですか。分かりました」とならないのが、「相談する側」がマジョリティである証拠です。
そんな「お悩み相談大国」である日本において、長年「三大お悩み解決師」として君臨し続けてきた細木数子さんと瀬戸内寂聴さんが、相次いでお亡くなりになりました。今年の初めにご一緒したテレビ番組で、リモートでの会話が上手く行かないことに苛立っておられた寂聴先生。「くだらない恋愛相談なんかする前に、まずは先生を悩ませている技術的な問題を解決してやれよ!」と、歯痒い気持ちになったのを憶えています。
そして世の中は、今後誰を相談相手に、答えや激励を貪っていくのでしょうか。思い浮かぶところでは、松任谷由実さん、松岡修造さん、マツコ・デラックスさんの「松・御三家」辺りが堅いかと。いずれにしても、ひとり残された美輪明宏さんに、これ以上の負担がかからないことを祈るばかりです。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2021年11月26日号