ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「お悩み相談大国・日本」について。
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いつの時代でも需要が途切れないと言えば「悩み相談」と「占い」です。お金を払ってでも自分の悩みを聞いてほしい、自分の未来を占ってほしいと願う人たちは後を絶ちません。そして需要がある限り、そこにはビジネスが生まれます。コンサルやカウンセラーといった「お悩み解決ビジネス」は今や一大産業であり、歩けば占い師や霊媒師に当たるような世の中です。
突然ですが、この世は2種類の人間で形成されています。悩みを「相談する人間」と「相談される人間」です。会社や学校などで、いつの間にか「相談される側」に振り分けられてしまい、要らぬストレスを抱えている人も多いはず。オカマ稼業なんてものも、たいてい「相談される側」だと決めつけられがちです。
一方、「相談する側」の人たちというのは、往々にして図太い神経を持っています。彼らにとっての「相談」とは、自分の話を聞いてもらうだけでなく、それに対する「ダメ出し」や「アドバイス」も当然のごとく要求し、さらには「慰め」や「激励」までがセットになっていたりするわけで、しかも驚くことに、世の中のマジョリティは、圧倒的に「相談する側」なのです。
その昔、霊媒師を名乗る見知らぬ女性から、「テレビであなたを観ていたら、背後に100人ぐらいの生霊が見えた。みんな静かに整列して順番を待っている。お辛いだろうから、何でも私に相談してほしい」と言われたことがあります。当時私は、夜な夜なOLの相手をする飲み屋でママをしており、その霊媒師の言わんとすることは何となく理解できましたが、それを彼女にどうにかしてもらおうという気にはなれませんでした。私にとって、自分の悩みや弱さを見せられるのはお医者様だけです。そう親にも言われて育ちました。