今年12月で廃止措置となるドイツのブロークドルフ原発(photo ギルバート・ズィークマン=ヨーケン)
今年12月で廃止措置となるドイツのブロークドルフ原発(photo ギルバート・ズィークマン=ヨーケン)
この記事の写真をすべて見る

 ドイツが国内の原発を廃止する2022年末まで、あと1年と迫っている。欧州連合(EU)で原発活用の機運が高まる中、乗り越えるべき課題は少なくない。AERA 2021年12月6日号の記事を紹介する。

【グラフ】原子力の割合は?ドイツの電源構成比はこちら

*  *  *

 風力発電の設置が多いドイツ北部シュレスビヒホルシュタイン州の州議会議員で、エネルギー政策に詳しいベルント・フォス氏(67)=緑の党=に、脱原発と今後の展望について聞いた。同党は、12月に発足する見通しのオラフ・ショルツ新政権でカギを握る政党とも言われている。

──原発の廃止措置は計画通りに進んでいますか。

 脱原発を決めた2011年に17基あったものが現在は6基。そのうち3基は今年末に、残りの3基は来年末に廃止となります。ただ、海外企業が所有する核燃料製造工場とウラン濃縮プラントの2カ所は今後も運転を継続し、輸出をします。

風力と太陽光を増設

──原発が減ると、電気の安定供給に不安は残りませんか。

 風力と太陽光が増設されて、原発の分をカバーできるくらいになっています。原発を動かすために、風力発電を止めることもあるくらいです。

──電気が足りなくならないのは、輸入しているからでは。

 ドイツの電力輸出と輸入を比べると、輸出が大きく上回っています。欧州には国を超えた電力市場があり、お互いに電気を取引する仕組みが出来ているのです。フランスの原発で作った電気を輸入することもあれば、ドイツの再生可能エネルギーの電気を輸出することもあります。

──原発を減らすと、石炭火力の増強で温室効果ガス(GHG)の排出量が増えるとの声もあります。

 ドイツでは20年までに1990年比でGHGの4割減を達成しました。コロナ禍による経済活動の低下も影響しましたが、原発を減らしたのと同じだけ再エネ設備を増強しているので排出量が増えることはないのです。

──電源構成比では再エネが約44%で原子力の11.3%を大きく上回ります。再エネの中では風力が約23%で最大ですが、今後も主力電源となるのですか。

 北部は風が強いので風力に適していて、南部は太陽光が中心です。洋上風力も風力の4.8%を占めます。今後10年から15年で風力と太陽光発電による電気の供給量を3倍に増やす計画があり、うち3分の2は風力です。50年までのカーボンニュートラル(温室効果ガスの実質排出ゼロ)の目標値に近づけるためにはこれぐらい増強する必要があります。

次のページ