
そして白杖は、ユキコにとって生きるための道具。誰だって便利な道具は使うのに、白杖は持ってるだけで「普通」じゃないと思われる。
そんなユキコに黒川は言う。「ユキコさんは普通の世界で生きてるじゃないっすか。ちゃんと学校行って勉強して、俺みたいなバカにもビシッと言えてカッコいいっス!」
顔に傷がある不良の黒川に、世間の風は冷たい。黒川の喧嘩相手・金沢(鈴木伸之)もまた「自分は普通じゃない」と言う。なぜなら彼の思い人は「男(黒川)」だから。
普通ってなんだろう。誰もがみんな普通に生きて、普通に恋をしているだけ。「やさしい世界」なんて言うのは簡単だけど、このドラマで描かれるのは、私たちが踏み出したい「一歩先」の世界だ。
黒川がユキコに送ったラブレターは、彼女が読めるよう一枚一枚にばかデカい文字が。それは「恋」と「です!」。
なんだかキュンというよりも、たまらなくじーんとしちゃうんだなぁ。
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
※週刊朝日 2021年12月24日号