放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、Netflixオリジナル映画「浅草キッド」について。
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Netflixで配信されてからすぐに日本で1位になっていたNetflixオリジナル映画「浅草キッド」。
いやー、この映画がこのタイミングで配信されて良かった。コロナ禍でたまりにたまったモヤモヤした思いをすっ飛ばしてくれた。
もう最後の30分くらいはずっと泣いてた気がする。この映画は年齢、立場、今の状況なんかによって受け取り方も違うだろうし、泣き方も違うと思う。もちろん泣けなかったという人もいるだろう。だが、僕はかなり泣いた。僕の今のハートにドンズバ!ホークアイの矢なみにぶっ刺さりました。
あらためて説明しますと、『浅草キッド』は、1988年に刊行されたビートたけしさんの小説。ビートたけしさんの師匠である深見千三郎さんと過ごした青春時代を描いた自伝小説。僕がこれを読んだのは高校生の時でした。
過去、二度ドラマ化もされていますが、これを劇団ひとりが脚本・監督して作り上げた。
劇団ひとりがずいぶん前に、「浅草キッドを映画にしたいんですよね」と言っていた。
そこから7年ほど前に彼はまず脚本を書いた。ここです!ここが劇団ひとりのすごい所なんです。「映画化しましょう!」と決まってから脚本を書くわけじゃない。脚本がないと何も進まないと思って書いたのだと。二時間映画の脚本書くのってめちゃくちゃしんどい。それを、劇団ひとりは、まず書いた!!
20年ほど前、放送作家から映画監督になった先輩がいた。一緒に仕事をしていたディレクターのAさんがその先輩に「僕も映画撮りたいんですよ」と言ったら、「まず、脚本自分で書いてみなよ」と言われたらしい。結果、そのAさんは脚本を書かなかった。だってしんどいから。
この一番しんどい0から1を、行動に移せる劇団ひとり。これは才能だと思うのです。