写真 蜷川実花、hair & make 赤間直幸(Koa Hole)、styling 宮崎 司、costume 麻布テーラー、
撮影協力 スタインウェイ&サンズ東京
写真 蜷川実花、hair & make 赤間直幸(Koa Hole)、styling 宮崎 司、costume 麻布テーラー、 撮影協力 スタインウェイ&サンズ東京
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 ショパン国際ピアノコンクールで、1970年の内田光子以来の日本人最高位タイとなる第2位を獲得した。ピアニストとして活躍し、社長業もこなす理由は、日本のクラシック音楽界を変えたいからだ。AERA 2021年12月20日号から。

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――今年10月2日、ショパン国際ピアノコンクール本大会が幕を開けた。通常は5年に1度の開催だが、コロナ禍で1年延期となっていた。史上最多53カ国502人のエントリーがあり、予備予選を突破した87人が参加。日本からは14人が臨んだ。

 我々にとってはオリンピックやワールドカップのような世界一を決める戦いですから、出なかったら一生後悔すると思いました。待ち構える壁を乗り越えることのできるメンタルを鍛えるため、やるべきことは全部やってきたんです。

 本番前日は、翌朝10時の演奏ならその12時間前の夜10時に炭水化物をたくさん食べる。寝ている間にエネルギーに変わり、演奏中に最も頭が動くように逆算します。本番ぎりぎりまで練習するため、会場から徒歩3分のマンションを借りていたので、お米と炊飯器も持参しました。

――コンクールを知ったのは12歳の頃。ドキュメンタリー番組で「クラシックの世界にもこんなステージがあるんだ」と感動した。当時はサッカー選手を夢見ていたが、試合中のケガを機にピアノの道に進んだ。2015年のコンクールを見て改めて出場を決心し、23歳でショパンの国ポーランドへ留学した。

 コンクールにいざ出場するとなると、自分の中ではリスクが大きかったので本当に迷いました。すでにメディアにも出ていたし、周りからは今さら参加するのかという声もあった。もし結果を出せなければ、応援してくださる方々に申し訳ないという気持ちもありました。

■力を試してみよう

 支えになったのは音楽仲間の友だちでした。僕が立ち上げた「ジャパン・ナショナル・オーケストラ」のメンバーは同世代で、彼らも国際コンクールにエントリーして世界へ旅立っていく。チャレンジする背中を見て、カッコいいなと思いましたし、まあ流れ的には「次、社長じゃね?」といわれ(笑)。

 コンクールとはキャリアを築く場と思われがちですが、その過程でどれだけ作曲家について真摯(しんし)に勉強できるかを試されるんです。何が起こるかわからないステージを経て、一人前の音楽家として成長できる瞬間が待っていると信じていたので、自分の力を試してみようと思いました。

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