伊藤さんは「利用者さんと話すことは、ニーズを探ることや次のサービスにつながるため、とても大切なことです。でも、細切れ時間では、ご飯を食べ終わっていないお年寄りを置いて、『次の訪問先へ行かなきゃいけないから、さよならね』と言わなければいけない。ひどいことになっています」と語気を強める。
そのうえ、国は「ボランティアでもできる仕事」と市民が誤解するような制度を作ろうとして、全国のヘルパーから「評価が低すぎる」と憤慨の声が上がっている。
医療福祉ジャーナリストの藤原瑠美さんはこう話す。「スウェーデンでは超高齢社会に対して、1992年のエーデル改革以来、基礎的な医療を学んだ『アンダーナース』(介護福祉士)を育成しています。日本との違いは、社会が専門性を認めて給料も社会的地位も高い点で、アンダーナースは自分の職種を誇りに思っています」
東京地裁で国は、原告が訴える「移動・待機・キャンセルは事業者に労働時間として取り扱うよう通知を出していること」「その違反に、厚生労働大臣が監督指導をする規制権限はない」と答弁し、証人の尋問申請を却下し結審した。
介護の「労働者の労働環境」と、「要介護者の暮らしとケアの質」は車の両輪で成立する。
※1 厚生労働省「令和3年度介護給付費等実態統計の概況」
※2 厚生労働省(職業安定局雇用政策課)集計
※3 ホームヘルパー国賠請求訴訟原告団、山根純佳、ホームヘルパー実態調査アンケート報告書、2021年7月
※4 内閣府「地方分権改革に関する提案」
※週刊朝日 2022年11月4日号