■ちょっとイタい人と飲むと……

――普通に3人がトークをするだけでも成立したと思いますが、カードゲームの要素だったり、バトルにしたりと、番組を面白くするためにいくつもの仕掛けを作ったことに驚きました。こういうことを思いつくために、何か普段から心がけていることはありますか?

 本のタイトルにもなっていますが、日常生活の全部が「企画になる」とは思ってますね。特に心が動いた瞬間というのは全部企画になると思っています。それはいいことだけでなく、すごく腹が立ったこととか、悲しかったことも含めて、些細(ささい)なことでも自分の感覚のレーダーの一定ラインを超えたものに関しては、喜怒哀楽すべて企画になると思っています。

「心が動いた瞬間は全部企画になると思っています」と語る長崎さん(撮影/高野楓菜)
「心が動いた瞬間は全部企画になると思っています」と語る長崎さん(撮影/高野楓菜)

 とはいえ、そもそも日常生活で、レーダーを超えてくるような、波はなかなか立たなかったりもするので、強制的にイベントを発生させることもあります。

 そのうちの一つが、「ちょっとイタい人と飲む」ようにしていることです。少しいじわるな目線でもあるのですが、自慢話が止まらない自称・広告系クリエイター男とか、若かりし頃の武勇伝を語る元ヤンのおじさんとか。

 精神衛生上よくないので、3カ月に1回くらいの頻度で飲むようにしているんですけど、じっくり会ってみると、「こういうプロセスで怒るんだな」とか、「自慢話をする人って、自分の自慢を言い切ったあとは相手を褒めるフリしてもう一回自慢するんだな」とか、そういうのが分かってくるんですよね。ちょっとイタい人って、人間性がむき出しになることも多いし、得られる“あるある”の量が膨大なんです。あるあるは企画を考える上で切り口になったり、材料になったりするので僕らにとって欠かせないもの。だからこのやり方は結構おすすめなんですけど、あまり共感はされないです(笑)。

 結局、企画に近道ってないと思うんです。企画の近道は寄り道だから、寄り道しないで面白いものを作ることはできない気がしています。

■フワちゃんは質問への返しが秀逸

――長崎さんを代表する仕事の一つに、フワちゃんとのYouTube「フワちゃんTV」がありますが、フワちゃんとは仕事仲間であり、友達であるとおっしゃっています。

 さっきの話と一緒で、フワちゃんに最初に会ったときは「何なんだ、こいつ」と思ったんです。未知なる元気な生命体。でも、言語化しづらいけど面白くて、圧倒的なパワーを感じると思いました。フワちゃんみたいな人は見たことがなかったし、面白さの中に新しさがあって、一緒に仕事したいと思ったんですよね。

――今でこそ、フワちゃんは大人気になりましたが、最初は世間的にも奔放なキャラクターに戸惑いがあったように思います。

 まぁ僕が最初感じたのと同じく、理解不能な存在だと最初思われたはず。だからこそ「芸人だからギャグをやろう」とか、「芸能人だとこうやったら売れる」みたいな既存のルートを引くのではなく、フワちゃんがやりたいと言ってるところの道を開けていくのが、当時の僕の役目だったのかもしれないですね。YouTubeというルートで、どうやったら道が開けるのかを一緒に考えてきたように思います。

著書『それぜんぶ企画になる。』の1ページ。フワちゃんとの対談も収録されている(撮影・大川恵実)
著書『それぜんぶ企画になる。』の1ページ。フワちゃんとの対談も収録されている(撮影・大川恵実)

 フワちゃんとは雑談をたくさんするんですけど、考え方が独特で面白いんです。たとえば「友達に渡す誕生日プレゼントの正解ってなんだろう」みたいな、答えがない質問に対してのフワちゃんの返しが面白くて、雑談が尽きないんですよ。雑談が尽きないって、やっぱり大事だし、答えのない話をできる人は仲良くなれるとも思っている。だから友達としても楽しいし、そこに一緒にやっていく可能性を感じています。 

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