■「愛」を発露に企画を作りたい

――YouTubeやNetflixはじめ、CMなど広告の仕事もやっていますし、2019年には企画会社チャビーを立ち上げるなど、どんどんご自身の領域を広げています。放送作家になって9年ですが、少しずつ変わってきたことや、見えてきたことはありますか?

 んー、自分の中で「こうやっていきたい」という軸はありつつ、最近は毎日変わっていってるなと思います(笑)。

 もしかしたら、ブレてると思う人もいるかもしれないですけど、今、いろんなことをやらせてもらってすごく楽しいですし、最終的に自分が作りたいもののために全部知っておきたいという気持ちが大きい。

 放送作家をやり始めた時、企画の道は刀鍛冶の職人が刀を作るように、研いで研いで研ぎすましていくものだと思っていました。でも最近は、自分に向いているのはそうやり方だけではないかなと思い始めています。刀を研ぐことも大事だけど、隣の職人さんはどうやって作っているんだろうとか、だんご屋の仕事を知ってみたら実は刀鍛冶にも生きました、みたいなことがあるんじゃないかと。いろんなことを全部経験することが、意外と最高の企画を作ることの近道なんじゃないかと思って、意識的にいろんな仕事をするようにしています。

 放送作家としてある程度、これまでの経験やテクニックで「こうやったらできる」と分かるようにはなってきましたが、最近あらためて、熱い思いを持ってる人と仕事をすることの大切さを感じています。頭だけで考えるのではく、きちんと「愛」を発露にして企画を作りたいなと。

 こういう話をすると「青いな」と先輩方に思われるかもしれません。もちろん適切なタイミングで、適切な引き出しを開けて納品することが大事な仕事でもあります。でもやっぱり面白いものを作りたいという思いはずっとあるし、そこはあきらめたくないから意識しているところです。自分の企画した番組や映像を見た人の心に何かしら触るような、体温のある企画を作るということは大事にしていきたいです。

(構成/アエラ編集部・大川恵実)

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「見た人の心に何かしら触るような、体温のある企画を作るということは大事にしていきたい」(長崎さん)(撮影/高野楓菜)
「見た人の心に何かしら触るような、体温のある企画を作るということは大事にしていきたい」(長崎さん)(撮影/高野楓菜)

■長崎周成(ながさき・しゅうせい)

1991年生まれ。放送作家。地上波テレビ番組の企画構成を担当しつつ、2018年にYouTubeで「フワちゃんTV」「フワちゃんFLIX」をフワちゃんとともに開設。2019年に20代の放送作家を中心とした企画会社「チャビー」を設立し、CEOに。お笑いやバラエティーを中心にさまざまなメディアを横断して企画。企画構成を担当したものに、「Netflix Japan」「ZIP!」「週刊さんまとマツコ」「ドラえもん」「AUNコンビ大喜利王決定戦」「百喜利」など。

『それぜんぶ企画になる―うしろだてのない放送作家が新しいエンタメで世を沸かす20の方法』(左右社)はAmazonランキング1位(放送マスメディア部門)にもなった。フワちゃんとの対談も収録
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