「葬儀社の人たちの現場を取材。遺体の保冷庫まで見せてもらいましたが、取材するほど、本当に自分でやるとなると難易度は高いと思いました」

 出版は2019年10月。地道に売れ続けているが、読者から体験したという反響はいまのところないという。企画の発案は葬儀社で働いていたことのある編集者によるもの。記者も読めば読むほど「セルフは大変だ」と思った。

「そう思います。だから本の注意書きに、やるには覚悟がいりますと書いたんですよね」

 いちばんのハードルは、遺体の処置。体液が漏れ出さないように綿を鼻などに詰めていくのだが、「グイグイ押し込まないといけない。これは心理的にかなりキツイ」と松本さん。

■本人からが多いDIY葬儀相談

 よく「高い」といわれる葬儀料金だが、仕事内容を細かくチェックしていくと、なるほどなあと納得するところもある。そもそも松本さんがこの本を書くことになったのは、父親の葬儀の体験がもとにある。

「ネットの紹介会社に頼んだんですが、あとからいろいろ後悔したんです。父はテレビのカメラマンでしたから、あのとき映像を使って何かしてあげたらよかったとか。初めてのことだけにどうしたらいいか。いろいろ話を聞いてもらえる葬儀社だったら、よかったんでしょうけど」

 私事ながら記者も10年ほど前に父の葬儀を体験し、弔いに関わる取材をしてきた。葬儀社選びのポイントを問われると、松本さんが言うように「プランの説明の前に、まず話を聞こうとしてくれるかどうか」だろう。

『DIY葬儀ハンドブック』が出版された当初は、葬儀関係者から否定的な陰口を浴びたりもしたが、なかには好意的な葬儀社もあるもので「DIYをサポートします」という葬儀社があらわれた。鎌倉を拠点とする「鎌倉自宅葬儀社」だ。

 名前のとおり、自宅での葬儀を専門とする。「自力葬」と名付けたプラン(税込み5万5千円。数回の電話相談などで完全サポートする)を始めたのは昨年6月から。

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