はらだ・ひか/1970年、神奈川県生まれ。2005年「リトルプリンセス2号」でNHK創作ラジオドラマ大賞、07年『はじまらないティータイム』ですばる文学賞を受賞。その他の著書に「三人屋」シリーズ、「ランチ酒」シリーズ、『三千円の使いかた』『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』『古本食堂』など(photo 小山幸佑)
はらだ・ひか/1970年、神奈川県生まれ。2005年「リトルプリンセス2号」でNHK創作ラジオドラマ大賞、07年『はじまらないティータイム』ですばる文学賞を受賞。その他の著書に「三人屋」シリーズ、「ランチ酒」シリーズ、『三千円の使いかた』『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』『古本食堂』など(photo 小山幸佑)
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 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

【写真】原田ひ香さんの著書『財布は踊る』はこちら

『財布は踊る』は、原田ひ香さんの著書。専業主婦のみづほは、夫と一人息子とハワイに旅行し、ルイ・ヴィトンの長財布を買うことを目標に節約生活を送る。念願の財布を手に入れたものの、ある事情から手放すことに。財布の行方と彼女の人生は? 財布を通してお金と人間のドラマを描く長編小説。原田さんに同書にかける思いを聞いた。

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 企業を舞台にしたビジネス小説は数多くあるが、主婦や若い女性の目線からお金の話を書いた小説はまだ少ない。そんな中、原田ひ香さん(52)が4年前に出版した『三千円の使いかた』は65万部のヒットになった。3世代の女性のお金の貯め方、使い方を描いた小説だ。新作の『財布は踊る』はその進化形だと話す。

「お金の話は面白くて、投資、詐欺など、書きたいことがまだまだありました。小さな子どものいる主婦で、夫はお金に無頓着という、経済的な弱さを抱える人が変わっていく姿を書きたかったんです」

 主婦のみづほは節約してルイ・ヴィトンの長財布を手に入れるが、借金返済のために泣く泣く転売する。まずは、みづほの徹底した節約ぶりに驚かされる。100グラム38円の鶏むね肉とモヤシでボリュームのあるおかずを作り、服はメルカリで調達する。

「12、13年前、美容室で『サンキュ!』『ESSE』などの主婦向け雑誌の節約術を読んで衝撃を受けました。夫の年収が200万円台で子どももいる主婦がきちんと料理を作って、毎月2万円くらい貯金している。服もきれいにしていて楽しそうなんです」

 それから原田さんも雑誌を買うようになった。当時の切り抜きを今も大事に持っている。財布を手放したみづほは、お金の知識を身につけて不動産投資に乗り出す。ここでは原田さんがかつて埼玉県の不動産業者に生活保護受給者向けの物件を見せてもらった取材経験が役立った。家賃4万3千円くらいの一軒家が多く、借り主が7年前に夜逃げしたままの物件もあった。

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