ブレに知事らが不信感
岸田首相がこの問題の深刻さを自覚し、旧統一教会関連団体と自民党との関係の全体像を把握することが不可欠だ。その上でコンプライアンス確立のため、第三者機関による検証などの具体策を打ち出さなければならない。教団との関係が深かった自民党安倍派を中心に反発も予想されるが、岸田首相が「解党的出直し」ともいえる抜本的な対応策を打ち出せるかどうかが焦点となる。それはまさに「古い自民党体質」との決別宣言でもある。
一方、岸田首相がこの問題の本質に迫らず、閣僚や党幹部と旧統一教会との関係がずるずると明らかになっていくようだと、内閣支持率の低迷は続くだろう。それは岸田政権の政策遂行にも影を落としてくる。岸田首相はコロナ感染拡大を受けて、陽性者の全数把握の見直しを提起。都道府県の判断で陽性者の登録を簡素化してもよいという方針を表明したが、一部の都道府県知事の反発を受けて軌道修正。見直しは全国一律で行うことにした。岸田首相の「ブレ」には知事らの不信感が募っている。
「決断」が裏目に出た形
岸田首相は原発政策の方針変更にも踏み込んだ。原発の再稼働に加えて、新増設や建て替えの検討を進める考えを表明したのだ。脱炭素の加速化や電力不足への対応を念頭に置いたものだが、原発の新増設を「想定していない」としてきた政権の方針転換には、原発を抱える自治体から反発が出ている。旧統一教会問題で内閣支持率が下がり、求心力を失っている岸田政権には、原発政策の転換という大きな仕事を成し遂げる政治力はなく、岸田首相は早晩、軌道修正を余儀なくされるだろう。岸田首相は安倍氏の死去を受けて安倍氏の葬儀を「国葬」とすることを表明。安倍氏が代表する自民党内保守派に配慮した判断だった。しかし、国葬の法的根拠が乏しいことなどに反発が高まり、世論調査では「国葬反対」が多数派を占めている。岸田氏の「決断」が裏目に出た形だ。
旧統一教会問題は自民党の足元を激しく揺さぶっている。小手先の対応に終始すれば、岸田政権は泥沼から抜け出せない。(政治ジャーナリスト・星浩)
※AERA 2022年9月12日号より抜粋