7月4日、ポーランドの都市ルブリンで、反戦平和のためのコンサートが開催された。ウクライナの音楽グループが奏でる楽曲は、聴衆の胸にどう響いたか。AERA2022年8月29日号の記事を紹介する。
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余韻は冷めやらず。聴衆は2時間近くもアーティストの出待ちをしていた。ポーランド南東部の都市ルブリンで行われた、ウクライナのラップグループ、カルシュ・オーケストラのコンサート。
90分にわたるライブは圧巻だった。アイヌ民族がムックリと呼ぶ口琴楽器を、ロシアを挟んだユーラシアの民はドリィンバというが、そのドリィンバの音色が電子音にのる。
ウクライナの伝統音楽とモダンなヒップホップを融合させた楽曲の数々は、会場を埋め尽くした聴衆を文字通り魅了した。
会場では、戦禍に苦しむウクライナ支援のためのカンパ要請箱が回され、ほとんどの聴衆がそれに応えた。ベラルーシから留学に来ていた女子学生のウイリャナはこう話した。
「ベラルーシは親ロシア国だから同じ考えと思われているかもしれないけど、国外にいるほとんどの学生はプーチンを批判している。私だってこのライブにウクライナ国旗を持ってきた」
ウイリャナと一緒に来ていた親友のオレナはウクライナ人だ。「カルシュは最高。今はまだ祖国に帰れないけれど、彼らの音楽を聴いて、力が湧いてきた」
■民族の力が宿る音楽
ライブを主催したルブリン文化センターのキュレーターであるアルカデューシュ・カジミエラク(36)、通称アレクは、目的を達成できたことに安堵(あんど)の表情を浮かべた。カルシュは5月14日にイタリア・トリノで開催されたヨーロッパにおける最大規模の音楽祭、ユーロビジョンにおいて、その楽曲「ステファニア」で圧倒的な視聴者票を集めて優勝していた。
しかし、アレクはこのコンサートを戦争開始直後、すなわちカルシュがヨーロッパの頂点に立つ前から企画していたという。
「彼らの音楽には民族の力が宿っている。ウクライナ難民の流入が激しくなるのは分かっていたから、有名になる前から、私は目をつけていた。ポーランドに来たウクライナ難民のために、ライブはぜひやりたかった」