ジャーナリストの田原総一朗氏は、日本が30年もの間、経済成長を遂げることができなかった原因を指摘する。
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現在、旧統一教会と安倍晋三元首相を含む自民党議員との、ただならぬ関係が大問題となっている。岸田文雄首相は、この大問題について、国民が納得できる調査をして、あいまいさのない報告をすべきである。さもないと、自民党は国民から致命的な不信感を抱かれることになる。自民党を批判すべき野党が弱すぎるので、国民の自民党に対する憤りは、すさまじいものにならざるを得ないのだ。
だが、今回は別の深刻な問題を提起したい。日本の経済危機について、である。
この30年間、欧州の先進国も米国も、それなりに経済成長を遂げてきた。だが、日本はまったく経済成長をしていない。
30年前には日本人の平均賃金は韓国の2倍だったが、現在では韓国に抜かれ、かつては米国が憤るほどの輸出大国であったのに、現在は輸入大国で、しかもすさまじい円安である。貧富の格差も大きくなり、何と雇用者の4割が非正規社員で、女性の場合は54%が非正規である。
なぜ、こんな事態になってしまったのか。
1980年代、中曽根康弘内閣の時代には、日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称されていて、世界に誇れる経済大国であった。もちろん、非正規社員などほとんどいなかった。
そして世界一の輸出大国で、米国にもどんどん輸出をしていた。
そのために、米国は貿易赤字となり、経済も不振となった。
当時は米ソ冷戦時代であったが、ソ連の経済は弱体で米国にとって恐れる相手ではなく、当時のレーガン大統領は、敵は輸出大国の日本だと決めつけ、日本を打倒する、とまで宣言した。そして、当時の蔵相である竹下登氏をニューヨークに呼びつけ、日本が米国にどんどん輸出ができるのは不当な円安のためだ、円高にしなければ日本をぶっ潰す、と恫喝(どうかつ)した。