別の分科会のメンバーの一人は尾身氏の発言についてこう語る。
「オミクロン株でも人流抑制は必要です。尾身さんはよりリスクの高いところを重点的に対策する必要があるということを言いたかったのだと思います。これまで我々はハイリスクな滞留人口を問題視し、尾身さんも人流の指標を重要視してきたわけで、人流抑制に意味がなくなったということは一切ない。デルタからオミクロン株に変わっても、変わりはないです」
厚労省関係者によると、「後藤茂之厚労相が尾身氏の発言を事実上、打ち消すために『従来の対策を求める』というメッセージを近く出す」という。
「政府としては尾身氏の案を”黙殺”するスタンスを示します。尾身氏は軌道修正を迫られることになるでしょう」(同前)
尾身氏はどう答えるのか。尾身氏が理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)に取材を申し込んだところ、「分科会会長としての発言なので、内閣府に依頼を申し込んでほしい」との回答だった。内閣官房の分科会担当者に尋ねると、「分科会会長としてでも、取材の窓口はいつもJCHOです」という答えだった。改めてJCHOに連絡すると、「確認する」と答えたが、その後返事はなかった。
順天堂大の堀賢教授(感染制御学)は尾身氏の発言についてこう見る。
「人流を抑制すれば、感染が減るというのは、尾身会長も当然理解している。尾身会長が言いたかったのは『人流抑制では、感染拡大とは関係の薄い社会経済活動も止めてしまうために、社会的ダメージが大きいという副作用がある。感染を抑えて経済を回すためには、感染の危険が大きいポイントに精度の高い対策を各人が行い、効率よく感染を抑えることが必要。例えば、会食の人数を少なくして一度に伝播する範囲を大きくしないようにする』ということを伝えたかったのでしょう。精度の高い、というのは、食事は黙食を徹底する、人のいるところでは鼻マスクは絶対にしないということも含まれます。感染対策と経済活動を両立させる、新しい段階に来ているのだと思います」
あらゆる方面に波紋を広げた尾身氏の発言だが、どのような決着を迎えるのか。
(AERAdot.編集部 吉崎洋夫)