ウクライナへのロシア軍侵攻で、欧州は第二次世界大戦以来の危機的な状況となっています。ヨーロッパの地域紛争の大本を探ると、ほとんどが第二次大戦に起因します。戦史・現代史研究家の山崎雅弘さんは近著『第二次世界大戦秘史』(朝日新書)で、独ソ英仏に翻弄された周辺国の視点で大戦の核心を多面的・重層的に描いています。今回のロシア・ウクライナ戦争について、山崎さんに歴史的な背景と構図を読み解いてもらいました。
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■ウクライナ戦争の構図
第二次世界大戦は、ドイツやイギリス、ソ連などの「大国同士の戦い」であったのと同時に、大国のはざまで戦争に巻き込まれた「周辺国それぞれの戦い」でもありました。
拙著『第二次世界大戦秘史』は、従来の第二次大戦に関する文献ではあまり、あるいはまったく触れられてこなかった「周辺国それぞれの戦い」に焦点を当てて読み解いた内容です。
中には、みずから進んで大国の戦争に参加した国もありましたが、ほとんどの場合は大国の横暴や身勝手な都合による侵攻を受けて、望まずして自国内が戦場となり、大勢の市民が巻き込まれて、命や生活を失うこととなりました。
戦争を始めるか否かの決定権は、実質的に大国だけが握っており、力の弱い周辺国は、不利を承知で巨人の進撃に正面からあらがうことしかできませんでした。
こうした構図は、2月24日に始まったロシア・ウクライナ戦争にも見られるものだと思います。この戦争は、対等な力を持つ大国同士の戦いではなく、ロシアという大国が、ウクライナという周辺国に対して行った一方的な侵略であり、その認識は現在の国際社会でも広く共有されている模様です。
そして、ウクライナを支援するアメリカとヨーロッパ諸国、具体的には「北大西洋条約機構(NATO)」加盟国の存在が、この戦争の構図を複雑にしていると言えます。ロシアから見れば、この戦いは「ウクライナとの二国間戦争」であるのと同時に「アメリカとNATOを相手とする戦略的な攻防」でもあるという二重構造になっているため、局地的な領土紛争とは異なる「戦いの動機」がロシア側で発生しています。
実はこれと似たような紛争は、第二次大戦中にも発生していました。