「人の命は何より大事」と話す森田富美子さん (撮影/写真部・高橋奈緒)
「人の命は何より大事」と話す森田富美子さん (撮影/写真部・高橋奈緒)
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 92歳の一人の女性のツイッターが注目されている。長崎の原爆で両親と3人の弟を失った。ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにし、「戦争を知る私がいま、反戦の声をより強く上げなければ」という思いに突き動かされていたという。

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 森田富美子さん(92)がツイッターで長崎での被爆体験を赤裸々に語り、戦争反対をそれまで以上に強く訴えるようになったのは、2020年8月9日、長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典での安倍晋三元首相のあいさつに憤ったことからだった。

「安倍という人は何も知らない。知ろうとしない。投下直後、自宅に戻った私は門柱だけが立っている家を見た。そこにメガホンを持ったまま寄りかかっている父がいた。顔は炭化して真っ黒になり、その大きく開けた口は爆風で飛んできたあらゆるものに塞がれていた」

 森田さんが式典の翌日に投稿したツイートだ。広島の式典とほぼ同じ文言を心魂なく口にする安倍元首相が許せなかった。

 森田さんは原爆で両親と弟3人を亡くした。自宅は爆心地から数百メートルの距離にあった。

 当時は16歳の女学生。「報国隊」として、爆心地から約10キロ離れた半島の軍需工場で働いていた。

「あの日も友だちと船に乗り、工場で働いてたんです。途中で避難した工場にある防空壕の横穴のなかでは、歌ったり、おしゃべりして笑ったりしてたの」

 突然、台風の何倍もの大きな爆音と爆風に体が吹き飛ばされそうになった。

「長崎が燃えている」

 男性の声に驚き、横穴を飛び出して近くの小山に慌てて登ると、市街地の方向に真っ黒なきのこ雲が立ち上っていた。

 家族の身を案じ、急いで帰路につくが、猛烈な火気で駅に近づけない。バケツ3杯の水をかぶり、山のほうへ迂回。そこで一晩を過ごした。

 道中で目にするのは、体の皮膚がベロリとむけた男性や細い道に並べたように埋め尽くす遺体。「水をください」とあえぐ女性の声も耳にした。

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