「コンビニ百里の道をゆく」は、52歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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誰しもどうしようもない怒りや憤りが湧いてくることがあると思います。仕事でも一生懸命やればやるほど相手への要求も高くなる。トップほど怒りを上手にコントロールする「アンガーマネジメント」が大事だと言われますが、苦手な方かもしれません(笑)。
私の場合、特に夜が感傷的になってしまいます。昔はよく、同僚や取引先と飲みに行ったあと、仕事が気になって会社に戻ったり、自宅で仕事をしたりしていました。
お酒が入っているせいかもしれませんが、「この仕事はどうなってるんだ」「どうしてうまく進まないのか」と頭の中がいっぱいになる。相手が目の前にいないので、そのままはき出すわけにはいかないし、かといってストレスを抱えたままだと、寝付きも悪くなるし、目覚めもよくない。
いまでも夜に考え事をすることがありますが、怒りが湧いてきたときは、いったんメールに思いの丈をすべて書き出すことにしました。それで結構、スッキリするんです。
ただし、それを相手に送ってしまうとアウトなので、文面も翌朝まで寝かせます。起きてメールを読み返すと、まあ恥ずかしいことがたくさん書いてあるわけです。
怒りの源泉はたいてい、些細なことです。とりわけ社長が直情的になってしまうと、部下は何も言えなくなってしまう。私の場合、夜の怒りを抑えつつ、感情が落ち着く朝まで待って対処することが有効なようです。
一生懸命に仕事をしているのは、相手も同じ。それをくみ取りつつ、指摘すべき点や改善点はきちんと伝えたい。メールを送る前に、文面をじっくり眺めると、見直すところが分かってきます。大切なのは、Yes、Butと続けて、最後はYesで締めることです。相手のやっていること、言い分をしっかり受け止める。そこまで書いて、送信しないこともあります。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2022年4月11日号