ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「坂上忍」さんについて。
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以前にも書きましたが、お昼のテレビ番組を仕切る男性MCにとって、もっとも大切な要素は、ずばり「オバちゃん力」です。「オバちゃん度の高い男性」と聞くと、IKKOさんやマツコさんを思い浮かべるかもしれませんが、それではダメなのです。お昼間のテレビというのは、一日の中でも特に業の深い時間帯。主な視聴者層である「リアル・オバちゃん」たちにとって「味方」にもなり、「ささやかなときめきの対象」にもなり得る人選が求められます。
関東圏だと『ヒルナンデス!』の南原さん、『ひるおび』の恵さん、『ミヤネ屋』の宮根さん、『ゴゴスマ』の石井亮次さんなど、皆さん見事な「オバちゃん力」を備えたストレート男性ばかり。かつては、みのもんたさんや山城新伍さんといった「危険な欲情効果」を持つ男性が目立ちましたが、今はあくまで「現実的な男子像」かつ「程良く下世話なオバちゃん要素」が主流のようです。
ちなみに、テレビ朝日だけは、長らく「大下容子→黒柳徹子→上沼恵美子」と、「非男性による怒濤のアフタヌーン・メドレー」を貫いてきました。しかし今期からは、上沼さんに代わってDAIGOさんの料理番組が新たにスタート。観ている女性たちを「北川景子化」させるのか、それともDAIGOさんの方が早々に「オバちゃん化」するのか。今までにはなかった路線だけに楽しみです。
そして先日、8年間続いた『バイキング』が終了しました。司会の坂上忍さんもまた、この番組によって「オバちゃん力」を開花させた男性MCのひとりと言えるでしょう。しかし、それ以上に昼間の視聴者たちから支持を得たのは、ひとえに彼の「息子力」の高さにあると私は思っています。坂上忍を観ながら、「息子のことが心配で心配でたまらない母親」のような気分になっている人が全国にはたくさんいるはずです。現に、女でもない私ですら、「あんまり遠くへ行ったらダメよ!」「そんな格好で寝てたら風邪引くでしょ!」「ちゃんと野菜も食べないと体壊すよ!」と、あれこれ口煩く言いたがる母心を抱くことが多々ありました。