普段は車の行き来が多い大通りも、新型コロナ対策の行動制限のもとでは静かだった。奥に見えるのは瀋陽駅/3月24日
普段は車の行き来が多い大通りも、新型コロナ対策の行動制限のもとでは静かだった。奥に見えるのは瀋陽駅/3月24日
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 新型コロナウイルス感染拡大が続く中国では、徹底した「ゼロコロナ」政策が講じられている。隔離後にも及ぶ制約の実態、2週間ぶりに封鎖を解かれた記者が感じた思いとは──。AERA 2022年4月25日号の記事から、現地ルポの第2弾をお届けする。

【図】中国各都市のコロナ感染者数と主な対応はこちら

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 2週間にわたる隔離生活がようやく終わった。中国東北部の遼寧省瀋陽で暮らす筆者は、いま住んでいるマンションで新型コロナウイルスの感染者が見つかり、自分の部屋まで封鎖されてしまったのだ。当局の徹底ぶりは、前回4月18日号でお伝えした通りだ。

 隔離が解ける予定の4月10日。昼ごろから、今か今かと解放の知らせを待った。

 夕方6時をもって部屋から出てもいいと伝えられたのは、その20分ほど前。グループチャットを通じて、マンション側から通知があった。

 今後も必要がない場合は部屋から出ないように。廊下や通路、地下駐車場などで散歩や運動をしないように。親類や友人を含めて、外からのマンション訪問は禁止──。そうした注意書きも添えられていた。

 注文した出前を受け取るため、1階に向かう。ドアを開けて通路に足を踏み出しただけで、ちょっとうれしい。運動不足を少しでも解消できればと、ふだんのエレベーターをやめて階段を使うことにした。

■階段をおりて筋肉痛

 散歩でもないし、運動が主な目的でもない。ご飯を取りに行くためだから、何も問題はないだろう。誰にとがめられたわけでもないのに、「階段で移動する理由」をあれこれ考えている自分に気づいた。

 2週間、出歩かなかったダメージは小さくなかった。途中から足元が怪しくなり、転ばないように一歩一歩踏みしめながら階段をおりた。十数階を下るのがひと苦労だった。エントランスの外側に出て、空を見上げ、深呼吸した。縄跳びを持った住民の男児が現れ、跳び始めた時には、連帯の気持ちが芽生えた。みんな運動したいのだ。

 出前を受け取り、上りは迷わずエレベーターに乗って部屋に戻った。翌日、軽い筋肉痛が待っていた。

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