私たちが私たちでいるためにとても重要な「心の声」ですが、心がネガティブに傾き出すとマイナスの方向にも力を発揮してしまいます。冒頭にもあったように、くよくよ考えてしまえばしまうほど、心がネガティブになり、心や体の健康を脅かしてしまうのです。
心がネガティブになった時、誰だって友人や家族にちょっと相談したくなるものです。実際、くよくよと「心の声」がネガティブに働きだしたとき、私たちが他人に相談したくなる傾向は心理学的にも研究されてきており、程度の差こそあれ万国共通の心の働きであることがわかっています。
人間の脳は他の人との関わり合いを予期すると、快楽物質であるドーパミンを分泌します。脳はその「快楽」を求めて、悲しみを他の人とシェアしようとするのです。
そして、人に実際に悩みを相談するとき、一度ですめば健全にすむかもしれないところ、ついつい何度も同じようなことを相談してしまうなんてことも。すると、聞き手の方もたまらず、ネガテイブな相談に嫌気がさしたり、相談されないようにその人を避けたり、関係が引き気味になってしまいます。実際に、人に悩みを何度も相談すると人間関係が悪化してしまう傾向があることがこれまでの研究で明らかにされています。
つまり、悲しいときにより良い心の状態を求めて周りに相談しようとするものの、実際に相談してしまうと、人間関係に悪影響が出てしまい、かえって心の不安定につながってしまうのです。
それでは、人に相談するのが得策でないとすると、一体どのように、ネガティブに走りだした「心の声」と付き合っていけばいいのでしょうか?
この難問に対するヒントがサッカー元日本代表の本田圭佑選手の名ゼリフに隠されていました。本田選手は、言わずと知れた日本を代表するサッカー選手。サッカーのワールドカップに3大会連続で出場し、海外でのプレー経験も豊富です。プレーだけでなく、印象的なメディア・パフォーマンスでもファンを魅了してきました。
その本田選手がイタリアの名門クラブACミランへ移籍を決めた2014年1月。会見での記者とのやりとりが注目を集めました。当時、数多くあったであろうオファーの中から、どうしてACミランを選んだのかと聞かれ、本田選手は英語でこう答えました。
That’s easy, I just asked my little Honda in my heart “Which club do you want to play?”
(それは簡単でした。私の心の「リトル本田」に「どのチームに行きたい?」と尋ねたのです。)