テスラやスペースXを率いるイーロン・マスク氏がツイッターを手に入れた。「言論の自由を拡大するため」というが、社会を揺るがす危険をはらむ。AERA 2022年5月16日号より記事を紹介する。
【写真】ツイッターがトランプ前大統領のアカウントを凍結した際にCEOを務めていたジャック・ドーシー氏
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「私を痛烈に批判する人にも、ツイッター上に残って発言し続けてほしい。それが、言論の自由というものだから」
4月25日、約440億ドルで米ツイッター社を買収することで合意したイーロン・マスク氏は、自身の約9千万人のフォロワーたちにそうつぶやいた。
電気自動車メーカーのテスラや宇宙ロケット企業スペースXを率いるマスク氏は、今や世界一の億万長者だ。そんな彼が自社株を大量に売り、金策に走ってまでツイッター社を所有して私企業にしたいのは「言論の自由を拡大するため」だという。
「イーロン・マスクが目指すのは、罵詈(ばり)雑言や差別発言を含めたあらゆる過激発言を際限なく垂れ流せるネット上の『フリー・フロー』の場だ。それを『言論の自由』という“記号”で包んで、さも素晴らしいものかのように見せているだけ」
そう語るのは、米国のメディアをウォッチする非営利団体「メディア・マターズ・フォー・アメリカ」の代表であるアンジェロ・カルソン氏だ。
「ツイッターはこれまで、リベンジポルノの映像や、アジア人への人種差別発言などの投稿を容認せずに削除し、他のどのプラットフォームよりも早く規制を実行してきた。マスクはその規制を緩めたい。つまり差別発言や誹謗(ひぼう)中傷をしやすい場を提供するということ。これは非常に危険だ」と警鐘を鳴らす。
■トランプが復活する?
一方、この買収を歓迎したのは保守派テレビ番組FOXニュースのアンカー、タッカー・カールソン氏。「これは歴史の転換点になり得る」と絶賛した。
ツイッター社が凍結しているトランプ前大統領のアカウントが、マスク氏指揮の下で復活する可能性はあるのだろうか。前出のカルソン氏は「間違いなく復活させると思う」と即答する。