つまり60歳になっていざ換金をはじめようとした矢先に下落がはじまって、そのまま下げ止まらなかった場合、「すっかり元に戻るまで7~8年くらいかかることもある」ということ。
「株価というのは、デコボコ、ギザギザした値動きを繰り返すものです。何がきっかけで暴落が起こるかは誰にもわかりません。
ただ、結果的に株式市場は3つの暴落を乗り越えて右肩上がりで上昇しています。長い時間軸で見れば、株価は成長に見合った水準に収まっていくものなのです」
2021年までは米国株を中心に株式市場の調子がよすぎた。そのせいもあり「S&P500などに投資していれば儲かる」という油断(?)も生じていた。
2022年に入ってから米国株は下がり、ウクライナ危機もあり、投資ビギナーの間には動揺が見られた。
「株価が下がっているときは、多くの投資家が『この下落がずっと続くかも』と不安になります。しかしどんな暴落もいずれ終わる」
つみたて中は悩む必要はない。いつか終わるなら「今月は安く買えてラッキー」と思いながらつみたて続ければいい。では、運悪く老後を迎える前後にリーマン・ショックのような大暴落が起こったら、どうすればいいのか。
「老後は運用資産のすべてを現金化しなければいけない、という『思い込み』は捨ててください」
でも、年金は原則65歳スタート。60歳で定年の会社も多い。5年間、嘱託社員などで会社に残るか、別の仕事をしないと、年金も何もお金は入ってこない。
「『運用資産を取り崩すときは全額を換金しないとダメ』なんてルールはありません。60歳以降に自分が働かないなら、お金に働いてもらって育て続けましょう。老後も運用(保有)を続けながら必要な分だけ取り崩すのです」
■預金や年金もあるから
世の中には「60歳まで積極的に投資、60歳以降はハイリスクな投資は終了。できれば預金」という考え方が常識化している。
しかし老後は長いのだ。先ほど「S&P500はITバブル崩壊から元に戻るまで6年9カ月、つまり回復まで7~8年くらいかかることもある」と述べたが、60歳時点で資産が投信のみ、預金は0円という人は少ないだろう。