世の中を震撼させた安倍晋三元首相銃撃事件。山上徹也容疑者(41)が凶行に至った動機をひもとくカギとして浮かび上がるのは、新興宗教に翻弄された母親との関係性だ。母子の「呪縛」は彼の人格形成にどんな影響を与えたのか──。
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安倍晋三元首相を銃撃後、山上徹也容疑者は抵抗するそぶりもなく警護員に取り押さえられた。母親が入信した旧統一教会(現・宗教法人「世界平和統一家庭連合」)に恨みを抱き、「安倍氏が国内に広めたと思った。本当の敵ではなかったが仕方なく狙った」と供述しているという。母親は1991年に入信。84年に夫が自殺したことや、山上容疑者の兄の病気などがきっかけとなり、信仰へ傾倒していったといわれている。多額の献金をくり返し、山上容疑者ら3人の子どもは家に食べるものがないほど困窮したという。統一教会の本部がある韓国まで修行に出掛けて何日も家を空けることもあり、実質的にネグレクト(育児放棄)の状態にあったようだ。
精神科医の和田秀樹氏はこう語る。
「殴る蹴るなど暴行による児童虐待よりも、ネグレクトのほうが心理的な後遺症が強くなることが、精神医学のさまざまな研究でわかっています」
母親は祖父から相続した自宅や会社の土地を売却。総額1億円以上も教団に注ぎ込み、2002年に自己破産。家庭は崩壊した。山上容疑者は当時通っていた専門学校を中退し、生活費を稼ぐために任期制自衛官として海上自衛隊に勤務した。
カルトの問題に詳しい精神科医の斎藤環氏が、献金をやめられない理由をこう説明する。
「新宗教は基本的に現世利益を売り物として強調しますから、いま自分の人生が不幸だと思っている人ほどカルトにはまって、洗脳されてしまうのです。壺に何千万円も払うなど傍から見れば愚かな行為ですが、当人からすれば犠牲が大きいほど救いも大きいと思い込まされているのです」
山上容疑者は「統一教会によって人生と家族がめちゃくちゃになった」「入信した母親を恨んでいる」とも供述している。ツイッターでは<オレは母を信じたかった><こんな人間に愛情を期待しても惨めになるだけ>などと、愛憎入り交じった感情を綴っていた。取り調べでは、最近も母親と連絡を取っていたと明かしており、母子の関係は続いていたようだ。