漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「元彼の遺言状」(フジテレビ系 月曜21:00~)をウォッチした。
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良きミステリーを構成する三拍子は、探偵の面白さ、事件の面白さ、犯人の面白さ。
さて本作の探偵は、弁護士・剣持麗子(綾瀬はるか)。ハイヒールをカツカツ鳴らす銭ゲバ・高飛車・大食いキャラだ。彼女の元に届く元彼・栄治(生田斗真)死亡の報(しら)せと、その奇妙な遺言状。
「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」。雪に閉ざされた別荘に集う製薬会社の一族。
栄治の先輩で別荘の管理人である篠田(大泉洋)を相棒に、麗子は事件の謎を解明する。ってね、最終回までSNSも考察で盛り上がるそんなドラマと思うじゃない。ところがその謎、2話で解決。
2時間ドラマか、タイトル回収早すぎ。思わせぶりな金持ち一族は出番一瞬。盛り髪がすごい萬田久子も、ただ盛り髪がすごかっただけのキャラとは、とんだ萬田のムダ遣いだよ!
いったいこの後どうするのかと思えば、まったくどうってことないからびっくりだ。一応「篠田の正体は?」という縦軸はあるものの、毎回の事件がとっても薄味。
一話の中に「痴漢冤罪」「社員食堂への脅迫状」「後妻業の女の突然死とハンコの行方」という三つの事件を詰め込んでいるのに、それぞれの事件の関連性も特に無し。
事件の内容を映像で再現することも無くセリフで説明、冤罪容疑者はCMの間にいつのまにか釈放、推理もセリフ、犯人の心情もセリフで解説。だいたい場面は弁護士事務所。朗読劇か。
おそらくこの回の一番の盛り上がりは、ラストおもむろに篠田がぬかみその壺を取り出したシーン。隠していた偽造の身分証明書、そして告白する。「僕は殺人犯なんだ」
でもね、前日の夜大河ドラマで大泉さん(頼朝)は義経(菅田将暉)の首が入った桶に語りかけてたじゃない。ぬかみその壺も、一瞬首桶?って思うじゃない。探偵じゃなくたって、みんなもう知っているんだ、「全部大泉のせい」だって。