「今」は、BTSを語る上で欠かせないワードだ。彼らはいつも、自分自身の「今」を歌にする。「No More Dream(ノー モア ドリーム)」で学校にはびこる不条理や、若者たちの夢を奪う社会への苦言を歌ったのは、ほぼ全員が10代だった頃だ。他にもデビュー直後の心境と成功への渇望を歌った「Born Singer(ボーン シンガー)」、米国でのブレイク後、「ごめんね ビルボード、ごめんね ママ、息子が人気者で」と歌った「MIC Drop(マイク ドロップ)」……。彼らの歌には、彼らがその時に感じたこと、経験したことが生々しいまでに綴(つづ)られている。だからこそダイレクトに若者たちの心に伝わるし、等身大だから共感され、強いメッセージとしてガツンと心を打たれるのだ。
■大切なクムが三つある
20年に行われたオンライン公演ではRM(アールエム)がエンディングトークで「Stay Gold(ステイ ゴールド)」のタイトルにかけ、こう語った。
《ゴールドは韓国語でクム。世の中には大切なクムが三つあると言います。黄金(ファングム)、塩(ソグム)、そして、今(チグム)。僕にとってゴールドとは、BTSとARMY(BTSのファン)が共にしている、まさに今、この瞬間なのです》
BTSは今も、黄金に輝く「今」を生きている。
《僕たちは決して才能にあふれたグループではないんです。でも、努力する才能はあるかもしれない》(anan 2057号)
これは米国でのブレーク前夜の17年に聞いたSUGA(シュガ)の言葉だ。BTSは努力家集団だ。それも尋常でないほどストイックな。BTSの音楽の要であるSUGAは、音楽制作に並々ならぬプライドを持っている。それゆえ、自分に妥協は一切許さない。19年に公開された彼らのツアードキュメンタリー映画「BRING THE SOUL:THE MOVIE(ブリング ザ ソウル ザ ムービー)」には、SUGAが「寝る時間すらない」と嘆きながら、音楽制作に打ち込む姿が映されていた。