
中国がロシアの愚行をまねて台湾を攻撃することも起きそうにない。中国の輸入相手の第1位は台湾で半導体の供給を依存し、台湾の輸出の44%は大陸向け、台湾の海外投資の6割以上は大陸にあると言われ、台湾人約100万人が中国で経営者、技術者などとして勤務している。中台の経済関係は一体化し、中国が台湾に攻め込めば自分の足を打つ結果になる。
台湾行政府の世論調査では、「現状維持」を望む人が84.9%で、「すみやかに独立」は6.8%にすぎない。蔡英文(ツァイインウェン)総統も「現状維持が我々の主張」と演説している。
中国が威嚇さえしなければ、中台双方に経済でも安全保障でも有利なあいまいな関係、成功した内縁関係に比すべき状況が続くだろう。ロシアのプーチン大統領は大演習で威嚇したがウクライナ国民の反感を強め、引くに引けない状況になり侵攻し、大失態を招いた。これは習近平(シーチンピン)国家主席にとり「前車の覆るは後車の戒め」となるのではないだろうか。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)
※AERA 2022年6月13日号より抜粋
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