■不妊治療にお金を費やし貯蓄なし老後が心配

 結婚してから10年もの間不妊治療にお金を費やしたことから、貯蓄なしの状態のNさん。現在は賃貸物件に住んでおり、老後に住む家を持ち家と賃貸、どちらにするかで迷っているとのこと。家を持たない人の老後家計相談が見当たらないことからご相談をいただきました。家を買わないという決断をした人が周りにいなく、その中でどう老後を迎えたらいいのか目安がわからず不安なので、しっかり先のことを考えたいとお悩みです。

 夫は両親、祖母が土地を保有していることから、土地を買う気はないとのことですので、簡単に相続のことから回答していきましょう。

■祖母、両親から不動産は引き継げるのか? 相続の基本をおさらい

 夫の祖母が九州に土地を保有している(空家)そうですが、この土地は夫の両親のどちらかの相続人が相続することになります。その際、他の法定相続人がいなければ両親のいずれかがすべて相続できますが、もし法定相続人がいれば遺産分割協議に応じた割合で相続することになります。

 例えこの土地を売却した場合でも、孫である夫は原則としてそのまま相続財産を受け取ることができません。相続できるのは両親(法定相続人)が祖母より先に亡くなった場合、代襲相続として受け取れることになります。

 東海地方に住んでいるご両親の相続についても考えてみましょう。相続が発生した場合、たとえば父が亡くなったケースでは母親、夫、弟が法定相続人になります。その際、法定相続割合は母親1/2、夫と弟は1/4ずつになります。

「Nさんの夫がそのまま実家を受け取る」というのは、相談文でおっしゃるように机上の空論であるといえます。ただ、遺産分割協議で母親、弟が納得すれば、夫の考え通り実家を受け取ることが可能です。

 仮に夫が考えているように、九州の土地、東海地方の実家のいずれかを相続できる方法は、相続人である両親のいずれかが九州の土地を相続、両親2人が共に亡くなった時点で、弟と話し合いのすえということになります。

 いずれにしても相続人が夫以外にいるのですから、遺産分割協議次第で取得の時期は前後すると考えられます。あくまでも記載のデータ及び相続の一般論からの回答になることから実際に相続が発生した場合、税理士などの専門家に相談してください。

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「家を持たない老後」はアリなのか?