別れ際に「じゃあ、また。元気でね」と言った。そう口にしてから、場違いな挨拶をしたものだと思ったけれども、いまさら取り消せない。でも、小田嶋さんはにっこり笑って、温かく柔らかい手で私の手を握り返してくれた。笑顔と温かい握手が小田嶋さんからの最後の贈り物になった。

内田樹(うちだ・たつる)/1950年、東京都生まれ。思想家・武道家。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、合気道凱風館館長。近著に『街場の天皇論』、主な著書は『直感は割と正しい 内田樹の大市民講座』『アジア辺境論 これが日本の生きる道』など多数

AERA 2022年7月11日号

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