肝心な試合はどうだったかというと、「マウスピース」の存在を改めて実感させられるものとなりました。ボクシング系と格闘技系に限られますが、口に入れた男の器量をもれなく半減させてしまう恐ろしいアイテムがマウスピースです。魔裟斗であろうとKIDであろうと村田諒太であろうと、あれのせいで何度「不純な心」がへし折られてきたか分かりません。やはり今回も、そこがいちばんの懸念材料でした。

 ところがどうでしょう。今まで気付けていなかった自分も情けないですが、那須川天心さん、ほとんど「マウスピース負け」しない顔ではありませんか。もちろん若干の馬面感は否めないものの、今まで観てきたどの格闘家たちよりもガッカリが少ない。終始、私も色欲を保った状態で試合を観ることができました。

 私もここ2年のマスク生活のせいか、はたまた老化か、めっきり鼻の下が長くなり、真剣に美容外科の先生に相談申し上げている最中であることもあり、つくづく歯や口元は大切だなと、マウスピースによる両者の顔面変化率を比較しながら思い知る試合でした。

 普段は超好みの醤油顔でいらっしゃる武尊さん。終盤パンチを喰らうたびに不敵な笑みを浮かべていましたが、ちょっと怖かった。何もかも「マウスピース」のせいです。天心の勝ち!

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

週刊朝日  2022年7月8日号

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