国内外の人々を惹きつけてやまない京都。その四季折々の魅力を、京都在住の人気イラストレーター・ナカムラユキさんに、古都のエスプリをまとったプティ・タ・プティのテキスタイルを織り交ぜながら1年を通してナビゲートいただきます。愛らしくも奥深い京こものやおやつをおともに、その時期ならではの美景を愛でる。そんなとっておきの京都暮らし気分をお楽しみください。
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■底冷えの中 賑わう京の「節分会」
大寒が過ぎ、節分の頃が最も寒いと言われている冬の京都。地面から感じる冷たさが、つま先から身体の芯へと伝わり、いわゆる盆地特有の“底冷え”が厳しい時季です。そして、2月に入った途端に京の街は、節分の準備にいそいそと動き始めるのです。一層寒さが増す節分の夜、震えながらも意気揚揚と各々の馴染みの神社やお寺の節分会(せつぶんえ)に向かいます。
一年の無事と家内安全を祈る、大切であり楽しみでもある行事です。趣向を凝らした福引や温かな飲み物の接待、露店が並び、寒さを吹き飛ばす勢いで大いに賑わいます。さて、今回は一年で最も賑わう節分に、起上達磨(おきあがりだるま)で広く知られる「法輪寺」通称“達磨寺”を訪ね、だるま尽くしの小物とおやつと共にご紹介します。
■圧巻のだるま尽くし 心願成就の達磨節分会
上京区・円町、北野天満宮ゆかりの紙屋川のほとりに通称“達磨寺”で親しまれている「法輪寺」が、あります。1718(享保13)年に万海慈源和尚により創建。禅を大衆に広めるべく、戦後「起き上がり達磨堂」を建て、達磨節分会を始めたと言われています。全国から心願成就を祈って奉納された表情も大きさも様々なだるまが8000体余り祀られ、そのだるま尽くしの光景は、圧巻です。
境内はだるまの形に象られた鬼瓦や窓、本堂の中には干支とだるまが合体した土鈴など全国から集めたご住職のだるまコレクションがずらりと並び、見飽きません。節分会では、大だるまに無病息災を願い記したお札を貼り付けるのが習わしです。恒例の総当り福豆付き福引(分福会)は、京都人のお楽しみ。ほのかに甘いハト茶でほっこり和み、だるまの焼き印が入った名物だるま焼きを頬張り、お札付きだるまを持ち帰ります。“だるま”と言えば、倒れても自力で起き上がり、転んだ力の大きさで起き上がる「七転八起」の心。だるまさんにあやかって、そんな一年を過ごしたいものですね。