ー日本・ハンガリー外交関係開設150周年記念 ブタペストーヨーロッパとハンガリーの美術400年
明治時代に諸外国と外交を開始してから、今年は国交150周年を迎える国が続いていますが、ハンガリーもその一つです。ドナウ河を挟んだ2つの街、ブダとペストが一つになったハンガリーの首都、ブダペストという街の美しい景色は世界屈指とも言われています。そんな街から今、国立新美術館(東京都港区)に、ルネサンスから400年に渡り受け継がれてきた名品130点が集っています。出品元である、ブダペスト国立西洋美術館とハンガリー・ナショナル・ギャラリーの館長であるバーン・ラースロー氏によると、作品選びには日本人が「ハンガリー人になった気持ちで」鑑賞できる作品を、と考えられたそうです。この機会に400年に渡る歴史と文化の流れを、名品を通して旅するように鑑賞したいですね。ハンガリーならではの印象的な作品を一部ご紹介します。
ハンガリー風景画のパイオニアが描いた景色
© Museum of Fine Arts, Budapest – Hungarian National Gallery, 2019
目の前にこの絵が現れた瞬間、息を飲んでしまいました。作者のマルコー・カーロイ(父)は、ハンガリーにおける風景画の立役者と呼ばれています。イタリアに渡ったことが影響して、ハンガリーの風景画であるにも関わらず、イタリアの田園風景が再現されているのが特徴です。この柔らかな光と影が織りなす世界観が鑑賞者を幸せな気持ちにする優しい作品であることは、間違いありません。この作品が今回の展示に選ばれたというのは、ハンガリーを代表する名画である証と言えるでしょう。
展覧会メインヴィジュアルは「ハンガリーのモナ・リザ」
© Museum of Fine Arts, Budapest – Hungarian National Gallery, 2019
一見して、ハンガリーにも美人画があるのかと思ってしまう程、自然の中で美しく描かれた女性の肖像画です。19世紀に入り、貴族以外も肖像画を描くようになり、このように女性も描かれるようになりました。モデルの女性は画家・シニェイの妻。印象派と同じように補色を駆使して描かれています。紫色のドレスに、背景の黄色い花と緑が、差し色として効果を発揮していますね。ドレスは当時の流行スタイルで、人気を得た作品ですが、当初批評家の間では賛否両論に分かれました。しかし今では「ハンガリーのモナ・リザ」と呼ばれ、広く親しまれる作品となりました。この絵は新婚時代、夫人が1人目を身籠っている頃に描かれましたが、その後夫人とすれ違いにより残念ながら離婚してしまったそうです。この絵はシニェイにとって代表作であると同時に、愛に満ちた思い出の作品でもあるのでしょう。色彩美のインパクトとともに愛情のオーラも感じてほしい作品です。
モネの初期の作品にみるジャポニスム
© Museum of Fine Arts,Budapest – Hungarian National Gallery, 2019
ブダペスト国立西洋美術館のコレクションにモネの作品は3点あり、その中の一つである本作は、モネがカミーユと結婚した年に新婚旅行で訪れた街で描かれた作品です。私たちが見慣れているモネの作風とは少し趣が異なりますね。構成、色彩、線、いずれも日本の浮世絵の影響が色濃く出ていて、モネがジャポニスムを極めていく初めの一枚だったことが分かります。睡蓮だけじゃない、ジヴェルニーだけじゃない、モネの作品を堪能してください。
概要 他
他にもルネサンスから20世紀までに渡る130点には、各時代に好まれた絵画をはじめ、彫刻も含まれています。時代ごとに分かれて展示されているので、まさにルネサンスから現代への芸術のタイムトラベルをしている気分が味わえます。
また、12月12日は「漢字の日」ですが、館内では書の展覧会も開催中です。興味のある方はそちらもぜひのぞいてみてください。
【展覧会概要】
会期
2019年12月4日(水)~2020年3月16日(月)
毎週火曜日、年末年始2019年12月24日(火)~2020年1月7日(火)休館
※ただし、2月11日(火・祝)は開館、2月12日(水)は休館
開館時間
10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
その他詳細は下記のリンクサイトをご参照ください
【出典・参考】
・展覧会プレスリリース
・ブダペスト展 図録
・内覧会 ギャラリートーク