国内外の人々を惹きつけてやまない京都。その四季折々の魅力を、京都在住の人気イラストレーター・ナカムラユキさんに、古都のエスプリをまとったプティ・タ・プティのテキスタイルを織り交ぜながら1年を通してナビゲートいただきます。愛らしくも奥深い京こものやおやつをおともに、その時期ならではの美景を愛でる。そんなとっておきの京都暮らし気分をお楽しみください。
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■もみじの山里 京の三尾(さんび)へ
暦の上では立秋の頃、京都の暑さはピークを迎え、涼を求め山間へと足を伸ばしたくなります。京都の避暑地と言えば、左京の貴船、右京の高雄。高雄山、槙尾山(まきのおやま)、栂尾山(とがのおやま)、この京の三尾(さんび)と言われる辺りは、もみじの名所として名高く、紅葉の季節ともなれば多くの人で賑わいます。また、栂尾の「高山寺(こうさんじ)」は、日本最古の漫画と伝えられる国宝「鳥獣人物戯画」が生まれた里としても知られています。
青もみじに包まれた野趣溢れる山里と清滝川のせせらぎを堪能するなら、夏の時期がおすすめ。街の中心から約30~40分ほど、周山街道をバスに揺られ、山間をくねくねと登り、峠を越え高雄へ。清い川の流れを身体と心で感じながら、涼やかな夏の味も堪能できる川床へご案内します。
■せせらぎと河鹿の声に癒されながら 川床で堪能する夏の味
清滝川に沿うように建つ「高雄錦水亭」の川床へ、一歩、一歩、階段を降りて行くと、ひんやりとした山の空気が頬を撫でていくようです。提灯が揺れ、趣のある川床の席へ座ると、川面から美しい音を響かせる河鹿蛙(かじかがえる)の声と川のせせらぎの音が優しく届いてきます。目の前には、光と風に様々な表情を見せる青もみじの緑葉が広がり、いつまでも眺めていたくなるほど。都心の喧騒も日常の生活も、いつの間にかどこかへさらわれてしまうほどのこの情景に、身も心も癒され、清々しい気持ちに満たされます。
高雄の地で親しまれてきた料理旅館「高雄錦水亭」では、この「納涼床」にて風情あふれる川床料理を楽しむことが出来ます。ふっくらとした鮎の塩焼きや京野菜が使われたお昼の納涼会席を味わいながら、時を忘れてゆったりと過ごすことができるのです。