2019年になりました。今年は平成が終わり、新しい時代が始まる年でもあり、よりあらたまった気持ちで今日という日をお迎えのことでしょう。
「新年」といえば、「初日の出」を拝み、「初詣」をして、「初夢」まで見てしまったという方もいるかもしれませんね。
この「初」は「初心忘るべからず」という世阿弥の言葉にもあるように、日本人にとって大切な気持ちでもあるのです。
そこで今回は、年明けにふさわしく歳時記における「初」や「新年」の季語について調べてみました。
ちょっと素敵な「新年」の「初」の季語
日本人は昔から「初」を大切にしてきました。なかでも「新年」はすべての始まりの時。実は歳時記には「春夏秋冬」のほかに別冊として『新年』だけのものがあります。このなかから、身近でありながら新年らしい「初」の季語をご紹介しましょう。
新春の空は違って見える?「初御空(はつみそら)」
同じ空でも元日の空はいつもと違って清新な空に見えること。天をあがめる気持ちから「御」をつけてこう呼びます。都心では車も人も少なく、空も清々しく見えるのではないでしょうか。
なぜか可愛く思える「初雀(はつすずめ)」
一年中いるのに、元日に見た雀は、明るく美しく見えること。そういえば確かに……はそれぞれですが、同じ小動物のねずみに関しても、お正月だけは「嫁が君」と呼ばれ、福の神としてあがめられているそうですよ。
神聖な気持ちのあらわれ「初水(はつみず)」
元日に初めて使う水はおめでたい水であること。地方によっては、この日の水を水神様にお供えするところもあるそうです。「若水(わかみず)」とも呼び、この水を沸かしたものを「福沸(ふくわかし)」と呼びます。
女性のたしなみといえば「初鏡(はつかがみ)」
正月に初めてする化粧を映す鏡を「初鏡」と呼びます。鏡は「影身(かげみ)」から転じたもので、心を正す意味を持ち、手本となる「鑑」に派生しました。華やぎのなかに凛とした女性の姿が想像できますね。
正月だからゆっくりと「初湯(はつゆ)」
新年初めてお風呂に入ること。昔から銭湯は元日休みで、二日を初湯としたそう。九州の阿蘇でも、二日に入る風呂を「若湯」と呼んでいるそうです。自宅もよし、温泉もよし、正月気分でのんびりしませんか?
(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫/入門歳時記 大野林火・著 角川学芸出版)
今さら聞けない、「新年」の季語のなぜ?
ここでは、新年の季語の薀蓄をいくつかご紹介しましょう。
Q:春でもないのに「初春」「迎春」?
よく年賀状や街なかで見かける「初春」「迎春」という言葉について。
日本の新年にあたる時期は冬の季節であり、まだ春には遠いはずですね。では、なぜ「春」という言葉を使うのでしょうか?
A:
日本の春の始まりは、二十四節季の「立春」(2月4日ころ)になりますが、旧暦では、この日を新年としていたので、春を迎える日、すなわち「迎春」や「初春」と呼びました。新暦になっても新年に結び付いた気分は変わらず、言葉が残ったといわれています。
Q:「七草粥」はなぜ食べるの?
身近な風習といえば「七草粥」ですが、起源は何なのでしょうか?
A:
日本の新年は様々な行事が行われます。そのひとつ「七草粥」は万病を防ぐといわれ、7種類の野草をお粥に入れて食べるのですが、もともとは中国の1月7日の行事「人日(じんじつ)」から伝わったといわれています。中国では7種の野草のスープを飲むならわしがあるそうですよ。
(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫/入門歳時記 大野林火・著 角川学芸出版)
「初」は「新年」への挨拶である
いかがでしたか? ── 言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。
今回は新年の季語から「初」をご紹介しましたが、新年だけではなく四季折々に「初」が使われています。それは季節に対する挨拶であり、初心を大切にする日本人の美しい感性なのではないでしょうか。「初」からもらえる力は明日へのエネルギーとなるはずです。
とかく新年の「初」は身近なものであり、「知って得する季語」としてお正月休みの会話に十分使えそうですね。