昨今、文豪をキャラクターにした漫画が流行したことから、文豪たちの人となりに注目が集まっている。そんな中で出版されたのが、文豪たちの友情をめぐる逸話を収録した本書だ。書評家の著者が、全13組の文豪たちに新たな光を当てた。

 堀口大學と男色関係を疑われるほどに仲が良かった佐藤春夫。萩原朔太郎を「二魂一體」の親友と詩に書いた室生犀星は、近所に住んでいた芥川龍之介とも親しくなった。金田一京助と花瓶の桜の花を部屋いっぱいに撒き散らし、子どものように遊んだ石川啄木。ややこしくて美しい関係の数々が描かれる。

 遠い過去の偉人たちを著者が現代に引き寄せる。互いに影響を与え合いながらすぐれた作品を生み出してきた文豪たちの、生きる姿勢を垣間見られる一冊だ。

週刊朝日  2018年9月28日号