●感嘆した「そうじ」とは?

 帰ろうとしたころ、ギャルソンが「厨房を見ていくか?」と誘ってくれました。「もちろん! ぜひお願いします!」と中を見せてもらうと、それはそれは広い厨房で、何人もの人たちで片づけをしていました。

 私がこのフレンチレストランのすごさに驚いたのは、ここからでした。

 厨房の上のほうには、鍋やフライパンなどをしまっておくステンレスの棚がたくさんありました。

 その中にスタッフが体の3分の1くらいを入れながら、洗剤を使って泡だらけに見えるくらい一生懸命その中を洗っていたのです。食器だけでなく、棚の中を、です。私は驚いて質問しました。

「まさかこれを毎日やっているのですか?」

 返ってきた答えは、私の想像を超えていました。

「違うよ。毎食後にやるんだよ」

 平たく言うと、毎食後に年末の大掃除をしている、という感じです。

 とんでもない後味を味合わせてもらいました。

 ミシュランで3つ星を取り、パリで最もおいしいレストランと言われているのには、見えないところにまで驚くほどにこだわる、徹底した考え方に理由があったのです。

●『だから、また行きたくなる。』著者からのメッセージ

 売れている商品と、そうでない商品。
 もう一度行きたいと思うお店と、そうでないお店。
 伸びている会社と、そうでない会社。
 結果を出し続ける人と、そうでない人。

 あなたは、この違いは「何」だと思いますか?
 値段も質も大きくは変わらないのに、なぜ、お客さまは1つの商品を選ぶのでしょうか。

 実は、答えはとてもシンプルです。
「心を動かされる」から、です。
 そこに秘密があるのです。

 私は、川田修と申します。プルデンシャル生命保険という外資系企業で、営業の仕事をしています。全国約2000人中1位のトップセールスとして表彰されたことがあり、10万人に読んでいただいた『かばんはハンカチの上に置きなさい?トップ営業がやっている小さなルール』をはじめ、何冊かの本を出版し、海外でも翻訳されました。

 同じ会社の営業ならば、基本的に、同じ商品を、同じ環境、同じ価格で売っています。それでも、成績に大きな差が生まれます。これは、いったいなぜなのでしょうか。

 私がその理由に気づいたのは、前職のリクルートという会社から、現在のプルデンシャル生命に転職して、しばらくしてからでした。同じ営業の仕事だと思っていたものに、いくつかの「違い」があったのです。

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一番大きな違いは…