宇佐美まこと『骨を弔う』はいま話題のミステリーである。手がけたのは、片山恭一『世界の中心で、愛をさけぶ』や西加奈子『サラバ!』を世に送り出した編集者、石川和男。帯に「ここまで掴まれ、揺さぶられ、圧倒される小説は『サラバ!』以来です」という石川のことばがある。読まずにいられるか。
一気に読むと、期待を裏切らない面白さである。ぐいぐい引き込まれる。
小学5年生の男女5人が、学校の理科室から盗み出した骨格標本を山に埋めた。30年後、標本が見つかる。ただし、埋めた山からは遠く離れた川岸で。あのとき埋めたのは標本ではなく本物の人骨だったのではないか。だとしたら、それは誰の骨なのか。疑問を胸に、いまは中年となったかつての少年が幼なじみたちをたずね歩く。
ものごとには表面からだけではわからないことがたくさんある。また、30年の間にはいろんなことがある。幼なじみを訪ねる旅は、30年前には見えなかったもうひとつの現実に出会う旅でもある。
たとえば県議会議員の妻となった女は、はたから見れば成功者。しかし実際は姑のイジメや夫のDV&浮気、さらには夫の後援会からの細かな圧力で崩壊寸前だ。あるいは、料理人となって東北で幸せな家庭を築いた男は、震災で家族を失い、絶望のあまり立ち上がることもできないでいる。
5人の30年間を追いながら、物語は少しずつ骨格標本の謎に迫っていく。30年前、四国の小さな町で何が起きていたのか。子どもたちに見えないところで何がおこなわれていたのか。秋の夜長におすすめの傑作である。
※週刊朝日 2018年9月7日号