イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 たしかに、戦後の日本は米国の強い要請で自衛隊は発足したが、安全保障は米国に委ねて、防衛力については米国の求めに応じるという形でやってきたのである。

 その意味では、中曽根首相の説明は間違ってはいない。

 だが、米国の経済が悪化し、オバマ大統領は、米国は世界の警察ではないと言い、トランプ大統領は、世界のことはどうでもよい、米国さえよければよいのだと宣言した。第2次大戦後、米国は世界一強大で豊かな国として、世界の平和、秩序を守ることが使命だとしてきたのだが、それが実質的に崩れ始めている。

 つまり、中曽根内閣の時代とは状況が大きく変わっているのだ。

 となると、日本は米国との同盟関係は維持しながら、主体的な安全保障のあり方を構築しなければならない。

 そこで、岸田内閣の「国家安全保障戦略」の改定だが、私はその必要はあると思う。だが、ろくな議論もなく、一方的に決めたことには疑問が残る。これでは前のめりで決まった安倍晋三元首相の国葬と同じである。

 これからでも国会で論議すべきである。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2023年1月6-13日合併号

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