森山晋平『ビジネスパートナーと最強の人間関係がつくれる島耕作の名言集』。昨年7月に出た本だし、本自体がべつにおもしろいわけでもない。ただ、読んでるとつい、最近の政官の動きと重ね合わせたくなるんです。たとえば……。
〈ものごとはあいまいなままで放置しておいた方がいい場合もあると思うんですよ〉〈好き嫌いはあっても/そこは飲み込んで大人の付き合いをしましょうよ〉〈釈然としないが/この世界で仕事をしてゆくのならこれ以上追及しない方がいいのかも知れない〉。やれやれ。日本の企業社会と官僚組織はこういう掟の下で何事も忖度してきたのだろうね。
一方、〈きれいごとではつとまらない/販売の第一線で働くには今までの自分の人格を変えなければならない〉〈会社が決めることだから/いくら理不尽だと思っても従わなければならない〉なんてのは、単語を少し入れ替えれば自民党議員や官邸スタッフがいいそうな台詞である。
〈こちらに理不尽なところは何もない/だから下手に出ては絶対にダメだ〉は、菅義偉官房長官の思想信条みたいに思えるし、〈どんな小さなツテでも/持っておくと後で必ず役に立ちますから〉とか、〈誠意を尽くせば物事は好転するんだ/ということを身を以って学んだ〉とかは、籠池泰典氏や加計孝太郎氏の実感かも。
そして、官邸の最高レベルとされるあの人は〈責任をとって辞めるというのは逆に責任のがれにもなる〉とかいいそうだ。
だけど彼の評判は〈あいつがここまでのしあがって来たのも恐怖人事……/いつ 何時飛ばされるかもしれないという恐怖で/みんな服従して来たんだ〉ってあたりじゃない? で、みんながのみ込んでいる一言。〈あなたは自分の情況が悪くなると/みんな人のせいにする……/こうなったのは自分に非があるからだという発想は/あなたの中にはないのですか?/もしそれがなかったら/あなたはホントのバカですよ〉
すべては島耕作とその周辺の人々の言葉ですので。
※週刊朝日 2017年7月14日号