
参院選で大敗した自民党が、石破茂首相の「リコール」につながる総裁選前倒しの検討を始めた。だが、「石破おろし」を図る議員らの思惑通りには進んでいない。
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総裁選の前倒しは、党所属国会議員と都道府県支部の過半数の要求によって行えることになっているが、かつて行われたことはない。8月8日の党両院議員総会で石破首相の責任を問い、総裁選の前倒しを求める声が噴出したことを受け、参院選の「総括」の後に総裁選挙管理委員会が総裁選の前倒しについて、国会議員や全国支部の意思確認手続きを進めることになった。だが、総裁選前倒しは前例がないため、具体的な規定がない。8月19日に総裁選管理委員会の会合が開かれ、手続きの進め方について話し合われたが、意見は対立し、結論は出なかった。
「イライラするよ。本当に早く総裁選をやってもらいたいと思っている人がほとんどだ」
こう言っていら立ちを隠せないのは、旧安倍派の衆院議員A氏。
一方で、昨年9月の総裁選で石破茂首相を支持した無派閥の衆院議員B氏はこう言う。
「石破首相が就任してまだ1年もたっていない。自民党が昨年の衆院選、参院選で負けた最大の原因は政治とカネ、つまり安倍派の裏金事件です。総裁選を前倒しする必要はない」
党内の意見は真っ二つに割れている。
「うまいメンバー選びをしたもんだ」
19日の総裁選管理委員会の開催に先立ち、選挙で落選したり閣僚についたりして欠員になっていた委員の補充をした委員会のメンバーが発表された。委員長の逢沢一郎衆院議員以下、委員は衆参議員11人。派閥や出身地域のバランスを考慮して選出されたといい、11人は、旧安倍派と旧岸田派が各2人、麻生派と旧茂木派、旧森山派が各1人、無派閥が4人という構成になっている。
これについて、旧安倍派のA氏は不満げだ。
「総裁選管の人選は、森山裕幹事長や逢沢委員長が担っているのだろうが、旧派閥でバランスをとるというなら、100人いた旧安倍派からもっと選ぶべきではないのか。なぜ、10人もいない旧森山派からも選ぶのか」
自民党の閣僚経験者C氏がこう指摘する。
「前例がなかったことだけに、具体的なルール作りから総裁選管理委員会がやっていく。石破首相の退陣を求めるメンバーが多ければ、そんな方向性になるでしょうし、逆に少ないと石破首相を擁護するようなルールになっていく。委員11人中、確実に『総裁選前倒し』を言っているのは、3人ほどではないか。うまいメンバー選びをしたもんだ」