
「記名式は勘弁してほしい」
19日の総裁選管理委員会では総裁選前倒しについての意思確認の方法が話し合われた際、注目されたのが「投票か、書面か」、また「記名か、無記名か」という点だった。結論は出なかったが、「書面」「記名」になりそうな方向だという。
自民党の政務調査会で調査役を務めた政治評論家の田村重信氏はこう説明する。
「総裁選前倒しについて名前を書いて賛成、反対を表明するのはプレッシャーになる。政治は一寸先が闇。参院選で自民党がボロ負けした時は『石破首相辞めろ』コールがすごかった。しかし、今はマスコミの世論調査を見ると『石破辞めるな』という声が上回っている。石破首相を守るべく、森山幹事長が両院議員総会だ、参院選総括だとうまく時間稼ぎをしている間に、どんどん世論が変化、今は石破首相にいい流れがきている感じだ」
石破首相が続投となった場合、記名式で前倒しに「賛成」した議員は、今後のポストなど「出世」に響きかねないという声も党内から多く聞かれる。
「無記名にして、議員の本当の意向で投票できるようにすべき」(前出・A氏)
「国民から選挙で選ばれている国会議員なのだから、名前を書いて賛成、反対を表明するのは当たり前のこと」(前出・B氏)
と立場によって意見が分かれているのだ。
A氏はこんな本音を漏らす。
「地元は前倒しに反対、選出議員は賛成と意見が割れてしまうこともある。記名式だと、どの議員が地元の意向に造反したかがばれてしまう。派閥はなくなったことになっているが、今も隠然と影響力があります。旧安倍派の中では『一致結束して石破首相を倒す』と言ってくる元幹部もいますが、昨年の衆院選から1年もたたずに『また解散・総選挙はきつい、反対したい』という人は旧安倍派議員の中にもいます。大臣になれそうな当選回数の人も同様です。私も正直、解散・総選挙と記名式は勘弁してほしい」
田村氏はこう話す。
「無記名でやった場合、国民から見るとコソコソと隠れて自民党は何をやっているんだ、自分の意見くらい堂々と言えという具合に映ります。そうすると、ますます自民党のイメージは落ち、支持率がダウンすることは必至です。総裁選管理委員会は党内の一部門に過ぎないので、幹事長の森山氏の影響力が大きい。森山氏の老かいな手腕による日程、メンバー選びなどが一枚上手かなという気がする。石破首相はほんと、森山氏に助けられているよ」
(AERA編集部・今西憲之)
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