東野氏のリーフレット(撮影・加藤裕則)
東野氏のリーフレット(撮影・加藤裕則)
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 医師会、建設、郵便局など、7月3日公示、同20日投開票の参院選には、数多くの業界団体が候補者を擁立する。今回、注目されるのが、「令和のコメ騒動」の渦中にある農協だ。2007年から5回連続で独自候補を当選させているが、実は票が着実に減っている。そんななかで小泉進次郎農林水産相は矢継ぎ早に農協や農業の改革案を打ち出している。どんな影響が出るのか、農協関係者の危機感は半端ではない。

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 今回、農協を代表して立候補するのは新顔の東野秀樹氏(53)。昨春、全国農業協同組合中央会(JA全中)の政治団体が組織内候補として推薦を決めた。北海道の農家で、もち米や小麦、アスパラガス、切り花などを手掛け、地元農協の組合長を務めてきた。自民党公認で全国区となる比例区から出るため、昨年から各地の農協を回り、10万人以上と握手をしたという。

 東野氏は、今回で引退する元JA全中専務理事の山田俊男氏(78)の後任と位置づけられている。山田氏は初当選した2007年7月の参院選では44万9千票を獲得した。この時、14人が自民党比例区で当選したが、山田氏の得票は舛添要一氏の47万票に継ぐ2位(自民党の比例)で、農協の結束力の強さを見せつけた。

 2回目の13年は2位を維持したものの、山田氏の得票は33万8千票と約10万票減った。3年後の16年の参院選では、本県の農協組合長などを務めた藤木真也氏(58)が出馬。23万6千票で当選し、山田氏と合わせて農協推薦の参院議員は2人となった。山田氏は19年の選挙で3選を果たしたが、21万7千票と初当選したときの半分になった。順位も19人中9位(優先的に当選が決まる特定枠2人を含む)だった。

 選挙があるごとに候補者の得票が減っている状況だ。今回候補者が刷新するとはいえ、得票の減少傾向に歯止めをかけなければ6回連続の当選に黄色信号がともることになりかねない。

 しかも今回はコメの高騰が続き、風当たりが強い。農林水産省は今年に入ってようやく備蓄米の放出を決めたが、大半を落札したJAグループの全国農業協同組合連合会(全農)の流通で一定の時間がかかり、「農協は価格を下げたくないのか」などと消費者から批判を浴びた。

 支持母体となるJA全中の山野徹会長も、今年5月、高騰するコメの価格について「決して高いとは思っていない」と記者会見で発言した。コストをまかなえないまま赤字の稲作農家も多く、生産者側の思いを述べたとみられるが、高騰に苦しむ消費者からはSNSなどで反感を買った。

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