令和の子育ては共働き家庭も増加し、子育てに対する価値観は昭和時代とがらりと変わってきています。令和の父親たちが子育てに上手に参加できる社会になるため、どう変わるべきか、大阪教育大学教授の小崎恭弘さんに伺いました。※前編<産後の「父親」を支援するマニュアルを国の研究班がつくったのはなぜ? 「男性も女性と同じくらい“うつ”のリスクがある」>から続く

MENU 父親の葛藤は「もっと育児に関わりたい」から「上手に育児をしたい」に 土日の子育て支援センターにはパパもたくさん。でもパパ同士はしゃべらない? 誰かと同じ育休、子育てはあり得ない時代に

父親の葛藤は「もっと育児に関わりたい」から「上手に育児をしたい」に

――今の子育て世代の親はどのように育児と関わってきたのでしょうか。

 僕は今56歳ですが、27年前、長男が生まれた時に初めて育休を取りました。でも当時は男性の育休取得率は1%にも満たない状況。今でこそ男性の育休取得率は30%を超えましたが、当時男性が育休を取ると「なんで男が育休取るねん」「出世あきらめたんやね」「嫁は何しとんねん」と言われました。実際に僕がかつて育休を取りたいと上司に告げた時、「子どもの下の世話するだけやろ」と言われましたね。

 べつにその上司が意地悪で言ったわけではないんです。バブル時代なのでめちゃくちゃ働くことが当たり前でした。こうした価値観は僕ら世代の経営層の一部にまだ残っています。昭和の最後の価値観ですね。

 僕らは「ファザーリング・ジャパン」をスタートさせた、いわゆるイクメン1期生です。今はもうイクメンという言葉の賞味期限は切れていますが、当時の僕らには「自分たちは育児にもっと関わりたいのにできない」という葛藤がありました。でも今のパパは「自分は上手に育児ができない」という葛藤に変わってきています。

土日の子育て支援センターにはパパもたくさん。でもパパ同士はしゃべらない?

――令和の父親の特徴はありますか。孤立化する傾向はあるのでしょうか。

 孤立化は本当に大きな問題だと思います。男性は人とつながる機会が女性より少なく、つながるのが苦手な傾向にあります。全国の講演会へ行くとよく分かります。女性だけの講演会は始まるまでおしゃべりしていることが多いです。「みなさんお知り合いですか」と聞くと「今ここで初めて会った」と言います。一方、男性だけの講演会はだいたい始まる前からめちゃくちゃ静か。ほぼ全員缶コーヒーの裏の字を読んでますよ(笑)。コミュニケーション力の問題もありますが、「簡単に人に腹を見せるな」という文化的背景もある気がします。

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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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