今、土日の子育て支援センターのパパ率はすごく高いです。でもパパ同士はあまりしゃべらないケースが多いんですよ。“話しかけるなオーラ”を出している人も。そういうパパたちは「トンボ」と言われています。トンボは縄張りがあって、それを絶対互いに侵さない。そういうパパたちは事前に打ち合わせもしていないのに、等間隔でお互い距離を置いています(笑)。子ども同士が絡んでも、パパ同士が絡むことはほぼない。ママ同士なら「何カ月ですか」「この服かわいいですね」とどんどん会話が生まれていくことが、よくあるんですけどね。

 妊娠出産育児というのは誰かとつながるチャンスです。全国にいくつかパパコーナーやパパの日を設けている子育て支援センターもあります。パパ友作りのイベントを用意する自治体もある。父親支援にはこうした仕掛けが必要なんです。

誰かと同じ育休、子育てはあり得ない時代に

――もっと父親の育休取得率は伸びそうですね。これからの時代の子育ての心構えとは?

 育児・介護休業法が2022年に改正された時、育休のあり方は180度転換しました。以前は「すみません、育休取らせてください」と従業員が頭を下げるイメージでしたが、今は企業が「育休どうします?」と一人ひとりに個別対応するようになりました。

 今の育休はすごくフレキシブルです。条件の範囲内であれば働くことだってできるんです。休むか働くかの2択ではなくなりました。

 そういう意味では誰かと同じ育休、子育てはあり得ない時代です。全部カスタマイズです。会社や夫婦、子どもの状況、そして夫婦の価値観によって自分たちのスタイルを築いていく。モデルなき時代を生きていきます。育休や子育て支援の制度は大変複雑です。どんどん新しい制度ができます。これからの子育てには情報収集や個別の戦略が必要になってくるでしょう。

 とはいえ「子育ては大変でしょ」という前提は間違っています。確かに大変だけれど、同じくらいかそれ以上に喜びや楽しさがあります。子育てを通して人生の喜びや充実感を味わって、豊かに生きてもらいたい。『父親支援マニュアル』を通して、こうしたことが伝わればいいなと思っています。

※前編<産後の「父親」を支援するマニュアルを国の研究班がつくったのはなぜ? 「男性も女性と同じくらい“うつ”のリスクがある」>から続く

(取材・文/大楽眞衣子)

【前編はこちら】産後の「父親」を支援するマニュアルを国の研究班がつくったのはなぜ? 「男性も女性と同じくらい“うつ”のリスクがある」
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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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