演説は、1957年にストロム・サーモンド上院議員(当時民主党。後に共和党)が、公民権法に反対した際の24時間18分を超え、米連邦議会史上、最長だった。
ブッカー氏の演説が終わった数時間後、中西部ウィスコンシン州で行われた州最高裁判事を決める選挙の結果が、共和党に冷や水を浴びせることになった。民主党が支持したリベラル派のスーザン・クロフォード判事が勝利したのだ。
選挙戦では、トランプ政権で「政府効率化省(DOGE)」を率いる実業家のイーロン・マスク氏が、保守派のブラッド・シメル候補を支援し、2千万ドル(約30億円)もの巨額を陣営に投入した。
「買収されなかった」
選挙直前のイベントでは、クロフォード判事の就任に反対する請願書に署名した有権者2人に「感謝」として100万ドル(約1億5千万円)の小切手を贈与。ほかの署名者にもそれぞれ100ドルの小切手を配った。さらにマスク氏は4月1日の投票日、投票所の外でシメル氏の写真を持って自撮りをした有権者に50ドルを支払うとも発表。選挙の「買収」ともいえる行動だった。
しかし、勝利を収めたのは民主党が推すクロフォード氏。これでウィスコンシン州の最高裁は4対3でリベラル派判事が優勢を維持することになった。米大統領選では「大激戦州」となる同州の最高裁が人工中絶の権利を容認するといった民主党寄りの司法判断を今後も示す見通しに。「ウィスコンシン州の有権者は、イーロンに買収されなかった」とリベラル派は勢いづいた。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)
※AERA 2025年4月21日号より抜粋