
少子化やジェンダー平等などの意識向上などにより、別学の学校が男女共学になる流れが加速している。昭和女子大学の総長、坂東眞理子さんに教育者の立場から見た女子校の存在意義を聞いた。AERA 2025年4月14日号より。
【時代を振り返る】女性が男性に闘いを挑む時代は終わった !!




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──内閣府男女共同参画局の初代局長を務め、著書『女性の品格』でも知られる昭和女子大学(東京都世田谷区)の総長、坂東眞理子さん(78)。2007年の学長就任以降、グローバル教育に大きくかじを切り、毎年高い就職率を達成している。複雑で先行きが見えにくい時代に女子教育はどうあるべきなのか。女子校の存在意義を聞いた。
思春期から青年前期は男女を分けて教育することに大きな意味があると考えています。
男女は精神的、身体的に発達段階が異なり、女子のほうが早く成長する傾向があります。個人差はもちろんありますが、男子は同年齢の女子と比べると幼く、まだ自分に自信がない。女子に対して男子が優位でなければならないと思って、「女子のくせに生意気だ」「女子力がないとモテないぞ」などという心無い言葉を口走る。そうした幼い攻撃から成長途中の女子を守らなければなりません。
また重要なのは成長段階の早い女子にそのステージにふさわしい学習の機会を与え思い切り能力を伸ばさなければならないことです。どんどんレベルの高い目標に挑戦させて足踏みさせない必要があります。リーダーとしての経験、責任ある役割を果たす経験を積まなければなりません。
心無い言葉の積み重ねが女性の意識に影響を及ぼしている可能性は否定できません。「らしさ」に縛られ、「女性はこうあるべき」といったアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)が女性自身の心に根付いてしまうと、消すことはなかなか難しいと思います。
世界水準から後れ
私は内閣府男女共同参画局長だった03年には「20年に女性指導者を30%にする」という目標を定めて、閣議決定をしていただきました。でも、20年時点では30%にほど遠く、「30年までの可能な限り早期」に繰り延べされています。その背景にはまだ男女の心に根付いているアンコンシャス・バイアスがあると考えています。
思春期に別学であれば、こうしたアンコンシャス・バイアスは生まれにくいでしょう。全員が女子の学校では、「女子のくせに」とはなりませんから。偏見にとらわれて自分の可能性を狭めてしまうことを防ぐ意味で、女子校は大切な学びの場なのです。
いま全国的に共学化が進んでいます。最も大きな原因は少子化だと思います。どの学校にとっても定員の確保は経営的に大切ですから、男女どちらにも入ってきてほしいと思うのは当然です。でも、別学の存在意義があるのを忘れてほしくないと思います。
(構成/ライター・浴野朝香)
※AERA 2025年4月14日号より抜粋