
少子化などの影響で全国的に大学が淘汰される時代に、農学系学部の新設が相次いでいる。農学部にはどのような魅力があるのか。2015年に農学部を設けた龍谷大学を取材した。AERA 2025年3月31日号より。
【表】2010年以降に新設された農学系学部学科はこちら(全2枚)




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いま、農学系学部の新設・再編が全国で相次いでいる。今後は中央大学などでも、農学系学部の新設が予定されるなど、全国的に学生数を減らす学部が目立つ中、ここ20年間で農学系学部は2割近く入学者数を増やしている。
農学部新設ラッシュの先駆けが龍谷大学だ。2015年、国内で35年ぶりに「農学部」を開いた。
学びは幅広く、サステナブルな食品の研究、先端バイオサイエンスであるゲノム編集から、ドローン、GPSを搭載した耕運機と連動したアグリDXまである。農業経済、農業社会学といった文系的な学びも網羅し、一部の学科は、文系でも受験できる。
2月、滋賀県にある龍谷大学瀬田キャンパスを訪れた。JR瀬田駅からバスで8分。校舎の1階はオープンキッチンがあり、清潔感がある。
スーパーフードを研究
農学科の玉井鉄宗准教授が共同研究しているのは、駐車場の隅などに生えているイシクラゲだ。
「皆さん見たことがあると思います。見た目が気持ち悪いと言われることもある、嫌われ者です」
クラゲというがクラゲではない。シアノバクテリアという細菌の一種だ。
そんなイシクラゲだが、実は可能性を秘めたスーパーフードなのだという。まず、注目すべきは生命力の強さだ。玉井准教授は言う。
「肥料はいらず、水があれば育ちます。乾燥させると、半永久的に保存できるのです。こんな生物はほとんどいません」
乾燥したイシクラゲの標本に、87年ぶりに水分を与えたところ、再び増殖したという研究もある。その強さから、国際宇宙ステーションに持ち込まれた。
さらに、抗がん作用があり、血中コレステロールの上昇を抑えることが動物実験で確認されているという。また、紫外線を吸収し、傷の治りを早める成分を含む。化粧品やサプリメントに応用できるかもしれない。そして無味無臭。半世紀前までは、滋賀県の姉川流域では「姉川クラゲ」と呼ばれ、日常的に食べられていたという。
