Aさんの実家の庭でとれたみかん

 2023年末に施行された「改正空き家対策特別措置法」で市区町村が管理不全の空き家を認定できるようになった。倒壊の危険がある「特定空き家」、放置すれば特定空き家になるおそれのある「管理不全空き家」と認定されれば、固定資産税は最大6倍と跳ね上がる。それだけではない。管理が十分にできない空き家には、建物の倒壊や害虫、何者かの不法侵入といった不安材料も重なる。今後そこに住む予定がなく、管理ができないのであれば売るという選択肢もやむを得ないかもしれない。

 不動産売買などの相談に乗る不動産コンサルティング東京の担当者はこう話す。

「心理的な理由で売却を足踏みする人は首都圏に多いかもしれません。地方には売却にも賃貸にもつながらない物件が多いのも事実。大事なのは、家をどうしてほしいのか、生前に親が子に伝えておくことです。一緒に考えておくこと。そして売り急がないことです。十分悩んでほしい。管理しながら最低限維持して、それで納得したうえで、売却という選択をするならば悔いも少ないと思います」

諦めるしかない

 こうも付け加える。

「売らずに保有できるのであれば自分の代、子どもの代に不動産を引き継いでもらいたいという思いもあります」

 とはいえ、指定の期間以上保有することによって、節税につながる空き家特例の適用外になるので注意したい。

 前出のAさんは言う。

「実家は売却したとたんに自分のものではなくなる。これで良かったと諦めるしかない。家に限らず、人生の決断ってみんなそうかもしれませんね」

 家には住む人の思いや人生の足跡がそこかしこに染みついている。実家に帰ればいつも笑顔で迎えてくれた親亡き後は、実家が無言で温かく迎えてくれる。その存在に救われたり、癒やされたりしているうちは売却しないほうがいいかもしれない。しかし、感情だけで決められるものでもないところが難しい。

 後悔のない選択をして、どういう決断になったとしても、家や亡き親に対する思いも温かいものであり続けたいものだ。

(AERA dot.編集部・大崎百紀)

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