
働き方をもっと自由に――。副業にそんなキラキラしたイメージを持っていないだろうか。先日、ダブルワークをしていた男性の死が労災認定された。副業の実態は、どうなっているのか。
上から目線で見当違いの指示
「副業は諸刃の剣だと思います」
50代の女性は、副業先での評価や状態が、ダイレクトに本業や自分に響くと話す。女性は新卒で入社して以来、ずっと副業を持ってきた。
副業先で高評価を得たときは、自信がつき、本業のモチベーションもあがり、意欲的に仕事に取り組むことができた。
だが、スムーズにいかないときはそうはいかなかった。副業の担当者が20歳ほど年下の若者になったときは、つらかった。
「経験不足なのに、『仕事を発注してやっている」と言わんばかりの〝上から目線〟で、見当違いの指示も少なくなかった。無理な納期での発注もありました』
今思えば、それはその担当者の仕事の遅さゆえではなかったか。だが、身体面、精神面双方で疲弊し、本業のパフォーマンスも下がった。
仕事のマネジメントを複数抱えるリスク
副業をする、ということは、自分が仕事のマネジメントを2つ以上抱える、ということだ。当然、理想的なワークライフバランスや就労環境が保障されるわけではなく、自分自身に過剰な負荷が事態は起こりうる。
昨年4月、愛知県の男性(当時60)の死が名古屋北労働基準監督署によって労災認定された。
男性は2019年12月から岐阜大学工学部の研究員と、測量大手会社「パスコ」の技術社員を兼業。2021年5月に自殺した。大学では上司から厳しい指導を受け、会社では通常はチームで担う新規事業を1人で負う立場に置かれ、理解があった入社時の上司が全員転勤して孤立感を深めていたという。
労基署は、自殺は2つの職場でのストレスが原因と判断。2020年の労災保険法改正で、副業・兼業では全ての職場の仕事内容を総合的に評価されるようになったが、今回のように複数の職場のストレスを総合的に評価して過労自殺が労災認定されたケースは、これまで確認されていなかったとみられる。
働き方改革の一環として、国が副業を推奨し始めたのは2018年のことだ。