2022年8月、オランダ北部の難民申請センターに殺到する申請を求める人々(写真:アフロ)
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 紛争や迫害によって故郷を追われた人が増え続けている。それにもかかわらず、日本は欧米に比べて難民認定率が低い。なぜなのか。AERA 2025年1月27日号より。

【グラフ】2010年からの難民申請者数と認定数の推移はこちら

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 不法移民を「犯罪人」「レイプ犯」などと呼び続け、「米国史上最大の不法移民強制送還」を公約に掲げホワイトハウスを奪還したトランプ氏。同氏の再到来で、行き場を失くした移民や難民が急増し、世界全体の人の移動に大きな影響を与えると見られている。

 その際、1981年から難民条約に加入している日本も、危険を感じて国を逃れた人々を保護する義務がある。だが、日本の門戸の狭さは広く知られる。

 認定NPO法人「難民支援協会」によれば、23年の日本の難民認定率は3.8%。米国の58.5%、英国の61.5%、ドイツの20%などと比べ、文字通り、ケタ違いに少ない。

「日本の難民認定率が低いのは、まず難民審査を行う入管の視点にあります」

 そう話すのは、難民支援協会広報の田中志穂さん。難民申請をする人は、つらい経験をしてトラウマを抱えていたり、記憶が錯綜していたりする場合が少なくない。申請者の信ぴょう性がグレーの時は、「灰色の利益」と呼ぶ「疑わしきは申請者の利益に」という国際基準がある。だが、難民を審査する出入国在留管理庁は、難民の「保護」より「管理」の視点が強い。本来であれば、証拠が十分に出せず、難民である立証が難しい場合でも命に関わることなので難民の利益になるように判断することが求められる、という。

「あと一つ、『個別把握論』という日本独自の解釈も原因です。政府から個人的に把握され、狙われていなければ難民ではないという考え方で、認定されるべき人の範囲を極端に狭めています。また、人権侵害が一個人ではなく集団に対してなされることがあるという点も踏まえる必要があります。認定手続きを担う独立した第三者機関をつくるなど、制度の見直しが必要です」

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